中国美味紀行(四川編)―その5「ビールのお供に最高! 辣子鶏」

 というわけで、成都編のしょっぱなにご紹介するのは「辣子鶏(ラーズージー)」なのだが、料理について話しを進めていく前に、そもそも成都ってどこにあるの?っていう人がほとんどだろうから、ちょっとだけ成都について説明しておこう。

鹿児島とほぼ同じ緯度に

 成都は中国の中西部にある都市。緯度的には鹿児島とほぼ同じ位置にある。そのため気候が温暖で、もちろん冬はあってそれなりに寒いが、東京ほど寒さは厳しくない。日本の3分の2近い面積がある四川盆地の西側にあるため、1年中湿度が高く、夏は蒸し暑い。

 四川料理が辛いのは、この湿度の高さと関係している。漢方的な考え方では、湿度が高いと体内に熱がこもりやすい。そこで辛いものを食べて汗をかき、体内の熱も一緒に出してしまおうというわけだ。辛さにも理由があったのである。

成都の中心部は、このように円周状に幹線道路が走っている。中国の大きな都市はこれと同じような作りになっているところが多いが、これは中国の昔の都市構造の名残だ。地図でいうと、中央から二つめの黄色い輪っか「三环路」の南北の距離が、ほぼ東京の山手線の南北と同じ距離になっている。

 この三环路の内側が市街地で、その外側は郊外。そのさらに外側にある輪っか(これは高速道路)の外側はかなり田舎になってくる。

成都市の中心・天府広場にある毛沢東像。最近は中国の都市部ではあまり見かけない

これでもか!とばかりに唐辛子が大量に

 そして「辣子鶏」である。これは四川料理を代表する炒めものの一つ。四川省の隣にある重慶市(もともとは四川省の一部、現在は直轄市)を起源とする料理だ。

ピーナツが一緒に入っている店もある 骨ごと細かくぶった切って塩コショウで味付けした鶏肉を素揚げしたあと、大量の唐辛子、花椒、香味野菜などと一緒に一気に炒めて出来上がり。

 唐辛子の中に埋もれている鶏肉の細切れを食べるのだが、これがまたビールに合う。花椒が効いていてやっぱり美味い! よっぽど辛いものが苦手な人でもないかぎり、日本人ならだれでも好きになる味。鶏肉は骨付きのままぶった切ってあるので、口の中で肉と骨を選り分け、肉は味わい、骨は吹き出して食べる。このへんが慣れないとちょっと面倒くさい。

 唐辛子は食べないので、最後のほうは宝物探しのように唐辛子を箸でかき分けながら鶏肉を探すことになる。

食べ終わったあとの写真。肉よりも唐辛子のほうが多いくらいなのがよく分かる
 一つの料理にこれだけ唐辛子を使うわけだから、四川省全体では1日にいったいどれくらいの唐辛子が消費されているのか、想像するだけでも頭の中が辛くなってきそうだ。

 これからしばらくは成都の美味をご紹介していく。
 

佐久間賢三
中国在住9年5か月を経たのち、尻尾を巻いて日本に逃げ帰る。稼いだ金は稼いだ場所で使い果たすという家訓を忠実に守ったため(?)、ほぼ無一文で帰国。食い扶持を稼ぐためにあくせく働き、飲みに行く暇も金もない日々を送っている。日本の料理が世界で一番美味いと思っているが、中華の味も懐かしく感じる今日この頃。