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中国美味紀行その26(アモイ編7)「焼肉の粽なのか、それとも焼いた肉粽なのか──焼肉粽」

 粽(ちまき)というと、日本では5月5日の端午の節句に食べるというイメージがあるが、実は中国でもそれは同じ。というか、これは中国の風習がそのまま日本に入ってきたものだ(ちなみに中国の節句は旧暦で祝うので、旧暦の5月5日はカレンダー上は日付が毎年異なる)。しかしアモイでは、この粽が毎日のように食べられる名物小吃となっている。

あのソースがここにも

 この焼肉粽、果たして“肉の入った粽を焼いたもの”なのか、はたまた“焼いた肉が入った粽”なのか。名前から見るとどちらとも取れる。というわけで、アモイで一番の繁華街である中山路に並ぶ、焼肉粽が有名な店に行って食べてみた。それがこれである。

「焼肉粽」1個5〜6元ていど(90円)。大きさは握りこぶしほど 作るときは葉っぱに包まれているが、オーダーすると葉っぱをむいて、皿に入れて出してくれる。とんがりコーンのように天を向いてそびえ立つ粽が、妙に猛々しく感じられる。

 それにしても、この写真の感じ、どこかで見たことある。思い返してみたら、以前にご紹介した「土筍凍」の様子にすごく似ている。マスタードこそないが、アモイの料理になくてはならない赤いチリソースに香菜(パクチー)が添えられている。アモイ人はご飯モノにもチリソースを使ってしまうようだ。

朝ごはんとしてもよさそう

 この粽をプリンのようにしてスプーンですくって食べる……というわけにはいかない。粽はもち米で作られているから粘りが強く、スプーンですくおうとしても、粽が丸ごとスプーンにくっついてきてしまうのだ。仕方がないので、まずはスプーンで粽を崩してから食べる。焼肉粽のナゾが解き明かされようとしている。それがこれだ。

色とりどりなところも食欲を誘う 中には豚肉の角煮のようなものと栗、卵、小海老、あとは写真では見えないが煮しめたシイタケが入っている。もち米は中まで黒っぽい。まずはソースがつけないで食べてみると、見た目とは違ってあっさり味で、角煮の甘さが口の中を撫でるように広がってくる。

 そこにチリソースをつけて食べてみると、ほどよい酸味と辛味が交じり合い、南国のムードがいきなり口の中に広がり、内鼻孔を通じて鼻から脳天まで突き抜けていく。もち米なので腹持ちがいいから、オヤツとしてだけではなく、朝ごはんにもよさそうだ。

 で、結論からいうと、焼肉粽は“肉の入った粽を焼いたもの”でも“焼いた肉が入った粽”でもなかった。ではなぜ「焼」などという字が入っているのかというと、よく分からない……。「焼」という漢字を辞書で調べると、中国語では「焼く」という意味のほかに、「煮炊きをする、煮込む」という意味もあるのだ。ま、作り方がどうあれ、美味ければそれでいいのである。

オマケカット。週末の公園で。天気のいい日は友人同士が公園に集まり、お茶を飲みながら世間話に花を咲かせる。福建省はお茶の産地で、福建人にとってお茶は社交上なくてはならないものとなっている
オマケカットその2。公園では、お年寄りたちがナゾのカードゲームを楽しんでいる。手持ちの赤白緑の細長い札を出し合う。中国将棋から派生した「四色牌」と呼ばれる伝統的なカードゲームだという

佐久間賢三
中国在住9年5か月を経たのち、尻尾を巻いて日本に逃げ帰る。稼いだ金は稼いだ場所で使い果たすという家訓を忠実に守ったため(?)、ほぼ無一文で帰国。食い扶持を稼ぐためにあくせく働き、飲みに行く暇も金もない日々を送っている。日本の料理が世界で一番美味いと思っているが、中華の味も懐かしく感じる今日この頃。