SecurityInsight | セキュリティインサイト

中国美味紀行その59(深圳編13)「香港遠征2 台湾の小籠包レストランチェーン──鼎泰豊」

 前回は香港で味わう北京ダックをご紹介したが、2回目の今回もまたちょっとひねくれて、台湾のレストランチェーンである。そしてまた前回と同様、レストラン紹介の取材で行った際に、撮影用に出してくれた料理の数々を美味しくいただいたところである。

台湾のチェーンだけど、名物は上海発祥の小籠包

 台湾の有名なレストランチェーン鼎泰豊(ディンタイフォン)。世界各地に展開しており、日本にも20店近くの店がある。ここのウリはなんといっても小籠包で、この味が評判になったことから、海外のメディアにも注目され、その後、海外へと展開していったチェーンである。

 現在、香港には4つの店舗があるが、取材に行った当時は半島側の尖沙咀(チムサーチョイ)と香港島側の銅鑼湾(コーズウェイベイ)の2店しかなかった。その時は「ミシュランガイド香港・マカオ版」2011年版で両店が1ツ星を獲得したばかりで、生まれて初めてミシュランの星獲得店の料理が食べられる、否、取材ができるということで、期待に胸踊らせてお店に向かったものだった。

 取材で訪れたのは銅鑼湾のお店。当時は同じビルの上階に香港日本人倶楽部があったりして(すでに移転)、この建物には何度か来ていたが、1階にある鼎泰豊のほうは、自分には縁がないものとして、ほとんど素通りしていた。

 で、取材で料理の撮影をすべて終えてからいただいた料理がこちらである。

鼎泰豊の名物「特色小籠包」

 蒸しあがったばかりで、熱々のスープが中にたっぷり入った小籠包である。慌てて食べると口の中をやけどして、食べ終わる頃には上顎の内側の薄皮がベロベロになっている。

 小籠包はもともとは上海近辺の華東地方が発祥の食べ物である。それがなぜ台湾のお店で有名になったのかは分からないが、まあ美味しければどこで作ってもいいわけである。ちなみに鼎泰豊は小籠包の本場、上海にも進出している。

 もう一つ、こちらも華東地方発祥の料理。

「紹興酔鶏」(鶏肉の紹興酒漬け)

 料理名に「紹興」という名前がついているとおり、蒸すか茹でるかした鶏肉を紹興酒ベースのタレに漬け込んだものである。噛みしめるごとに紹興酒の風味が染み込んだ鶏肉の豊かな味わいが感じられる。紹興酒は上海の南にある紹興市で作られており、料理酒としてもよく使われている。

 香港人はあまりお酒を飲まないので、こういった料理もお茶を飲みながら食べることが多いが、やはりここは紹興酒と一緒に味わいたいものである。まあ取材だったので、お酒を飲むわけにはいかなかったのだが。

 その他、撮影用に出していただいた料理がこちらである(スタッフが撮影後、美味しくいただきました)。

左端「蝦肉紅油抄手」(ピリ辛ゆでワンタン)、その右「紅焼牛肉湯麺」(牛肉煮込みスープ麺)、右下「原盅鮮鶏湯」(鶏肉入りスープ)

「蝦肉紅油抄手」は四川発祥の料理、「紅焼牛肉湯麺」は中華圏ならどこにでもあるが、有名なのは台湾で生まれたものとされている。「原盅鮮鶏湯」はあっさり味のスープだが、滋味にあふれ、飲むほどにまた飲みたくなってくる味わいである。

 この鼎泰豊、ミシュランで星を獲得するほどのクオリティであるにもかかわらず、一人あたりの目安予算は100〜200香港ドル(1400〜2800円)と非常にリーズナブル。日本の鼎泰豊よりずっと安い。

厨房はガラス張りになっており、小籠包を包んでいる様子を見ることができる

 ただし、残念ながら香港の鼎泰豊は現在、ミシュランでの星を失い、2017年版ではかろうじて「ビブグルマン」という、星からは外れるけれども安くてお薦めの店の中に、香港進出当時からの2店が選ばれている。

 香港に行ったらまた絶対に行きたいというほどではないが、もし機会があれば、ぜひ行ってみたい店の一つである。
おまけカット。香港島にあるヒルサイド・エスカレーター。オフィス街がある中環(セントラル)の近くからレストラン街のSOHOを抜け、高台の高級住宅地へと登っていく。高低差135m、全長800mを23基のエスカレーターで約23分かけて乗り継いでいく。もちろん“途中下車”も可

佐久間賢三
中国在住9年5か月を経たのち、尻尾を巻いて日本に逃げ帰る。稼いだ金は稼いだ場所で使い果たすという家訓を忠実に守ったため(?)、ほぼ無一文で帰国。食い扶持を稼ぐためにあくせく働き、飲みに行く暇も金もない日々を送っている。日本の料理が世界で一番美味いと思っているが、中華の味も懐かしく感じる今日この頃。