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中国美味紀行その84(日本編18)「香港茶餐廳メシ編その4 日本よりも香港で人気の即席麺がメニューに──出前一丁」

 日本メーカーの製品ながら、日本よりも香港で人気の即席麺(インスタントラーメン)がある。それが日清の「出前一丁」。しかも香港の茶餐廳では、出前一丁の麺だけを使った麺料理が非常にポピュラーである。もちろん東京の茶餐廳でも食べることができ、今回は、これまた香港では極めて一般的な食べ方である汁なし麺で食べてみた。

香港では茶餐廳でも人気のメニューに

 出前一丁は昭和43(1968)年に日本で発売されたのだが、その翌年には香港に輸入されるようになっていたという。そして昭和60(1985)年には香港の工場で現地生産が開始され、今や本国・日本よりも人気のある“国民食”的なインスタントラーメンとなっている。

香港のスーパーの棚には出前一丁のパッケージがずらりと並ぶ。「買七送一」というのは、「7つ買うと1つオマケ」という意味

今はもうない「神戸照焼牛肉風味」。出前一丁の広東語読みは「チュッ チン ヤッ ディン」 その人気の理由は、現地の工場で香港人の好みに合わせた味の製品を次々と開発しているから。日本では、現在のところ通常の袋入りではスープの味が2種類しかないが、香港ではなんと16種類。かつては25種類あったこともあるようだ。味のラインナップはときおり入れ替わっているようだが、定番となっている味も多い。しかも普通の麺だけではなく、通粉(マカロニ)や米粉(ビーフン)を使ったものまである。

 この出前一丁は、香港の茶餐廳でも人気のメニューとなっている。しかも、スープは使わずに麺だけを使う。

 茶餐廳の麺類は、即席麺やビーフン、河粉(きしめんのような平たい麺)、マカロニ、スパゲティなどを選んで頼むのが普通なのだが、普通の即席麺とは別に、出前一丁を選ぶこともできる。しかも、出前一丁を選ぶと追加料金として4香港ドル程度(約60円)取られ、それでも出前一丁を選ぶ人が多いというから、いかに出前一丁が香港人にとって特別なのかが分かる。

 そして東京にある茶餐廳でも、麺類に出前一丁を選ぶことができる。こちらでの追加料金は100円。そこで、通常のスープ入りではなく汁なしを頼んでみた(汁なしのほうは出前一丁が使われており、追加料金はなし)。

 汁なしの麺類は広東語で撈麺(ロウ ミン)といい、茹でた麺の湯を切り、上に具を乗せて出てくる。具には卵&ハムや叉焼、ネギ&生姜チキンなどがあったが、今回はこれまた香港らしいものを選んだ。

沙爹牛肉撈麺(サー テー ンガウ ヨッ ロウ ミン)

 沙爹(サー テー)とはインドネシアやマレーシアなどで食べられている串焼き“サテー”のこと。香港の沙爹は串焼きではなく味付けのことで、やや海鮮の風味が混じった甘辛い味のソースが使われている。沙爹牛肉は、牛肉を沙爹ソースで味付けしたものである。

 特別に美味いというものではないが、しょっちゅう食べても飽きない味。スープがないので、小腹が空いた時にちょうどいい。家でインスタントラーメンを使って、オリジナルの撈麺を作ってみるのも面白いかもしれない。
 

佐久間賢三
中国在住9年5か月を経たのち、尻尾を巻いて日本に逃げ帰る。稼いだ金は稼いだ場所で使い果たすという家訓を忠実に守ったため(?)、ほぼ無一文で帰国。食い扶持を稼ぐためにあくせく働き、飲みに行く暇も金もない日々を送っている。日本の料理が世界で一番美味いと思っているが、中華の味も懐かしく感じる今日この頃。