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中国美味紀行その110(日本編32)「漢方薬的な効能のある中華スイーツ──亀苓膏」

 このところ、豆腐花、仙草、愛玉子と中華スイーツが続いたので、ついでに今回も同じくゼリー系のスイーツ、亀苓膏(グイ リン ガオ)をご紹介する。日本人の間では通称「亀ゼリー」。亀苓膏は漢方的にさまざまな効能があるので、もしかしたら“スイーツ”と呼んでしまうと語弊があるかもしれない。その亀苓膏が、缶詰ではあるが日本でも食べられるのである。

美肌効果やデトックス、便秘、体内にこもった熱を下げるなどの効果が

涼茶スタンドは、広東省の街のあちこちで見かける 亀苓膏は中国南部の香港、広東省、広西チワン族自治区でよく食べられている。広東省では涼茶(リァン チャー)と呼ばれる漢方薬的な効能のあるお茶を出す店などで食べることができ、香港では亀苓膏の専門店があるほどだ。

 その材料は、その名のとおり亀。お腹の部分の甲羅を干して粉末にし、それにさまざまな漢方の生薬を混ぜて煎じた液体を蒸して作る。甲羅にはコラーゲンが含まれているので、そのタンパク質が固まることでゼリーのようになるのだという。

 効能としては、美肌効果やデトックス、便秘、体内にこもった熱を下げるなどといったものがある。味のほうもそのままだと苦くて食べにくく、シロップや蜂蜜、練乳などをかけていただく。

 と、前書きが長くなってしまったが、この亀苓膏の缶詰が日本でも売られている。外国食品を売る小売りチェーンでも買えるようだし、池袋駅北口やアメ横にある中国食品を販売する店でも手に入る。それがこれである。

缶詰の名前にある「梧州」は広西チワン族自治区にある市で、亀苓膏が特産品となっている

 缶をパッカンと開けてそのままスプーンで食べるのもいいが、皿に出して食べたほうが、さらに気分が盛り上がる。

本場の亀苓膏には子宮を刺激し血液循環を促進する作用があることから、妊婦や生理中の人は食べるのを避けたほうがいいとされている

 お味のほうは、本場の店で食べるものよりもずっと苦味が弱く、最初からほのかな甘味がついている。薄味の黒飴のような味というのが一番近い。もう少し苦いが強いほうが、効き目がありそうな感じがしていいと思うのだが、まあ缶詰にあまり多くを求めてはいけないのだろう。
 

佐久間賢三
中国在住9年5か月を経たのち、尻尾を巻いて日本に逃げ帰る。稼いだ金は稼いだ場所で使い果たすという家訓を忠実に守ったため(?)、ほぼ無一文で帰国。食い扶持を稼ぐためにあくせく働き、飲みに行く暇も金もない日々を送っている。日本の料理が世界で一番美味いと思っているが、中華の味も懐かしく感じる今日この頃。