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吃貨美味探訪記 No.135(日本編その36)「中国東北部、ロシアとの国境にある街の名物──鶏西冷麺」

 鶏西冷麺(ジー シー ラン ミェン)といっても、中国在住経験者はおろか、おそらく中国人でさえほとんど知らないのではないだろうか。その名のとおり鶏西という街で食べられている冷麺で、そんな超ローカルな麺料理にもかかわらず、日本でも食べられる店があると知り、行って食べてみた。

日本の冷麺との違いは?

 中国東北部の最端にある黒龍江省の東部にあるのが鶏西市で、すぐ向こうはロシアである。北朝鮮からもそれほど遠くなく、中国の東北部には北朝鮮と同じ民族である朝鮮族も多く住んでいる。となると、料理も北朝鮮と似たようなものも多くあり、その一つが鶏西冷麺というわけである。

 筆者は鶏西市どころか中国の東北部にすら行ったことがないが、深圳に住んでいた頃、親しい知り合いの一人が鶏西出身だった。ある時、深圳の電気街で知られる華強北(フア チアン ベイ)の近くに、彼女の地元料理である鶏西冷麺を出す店があるからと連れていってもらったことがある。それで、鶏西冷麺を知っているのである。

今から15年前の2005年、深圳の華強北のメインストリート。この頃はまだ垢抜けない街だった

 もう10年以上前のことなので、どんな味だったかまったく覚えていない。覚えているのは、その店の店主が鶏西出身で、鶏西には朝鮮族も多いから、冷麺がよく食べられているという話を聞いたことだった。

 で、最近になり、鶏西出身の人が作っている冷麺を出す店があるというのをネットで知り、出張で近くに行く機会があったので、行ってみることにしたのである。

 店の場所も超ローカルな住宅街にあるにもかかわらず、近くには中国人が多く住んでいるようで、店内で聞こえてくるのは中国語ばかり。そんな店だけに、味は本格的なのだろう。鶏西冷麺のランチセットを頼んで、出てきたのがこれである。

鶏西冷麺。真ん中のキムチはそれほど辛くない

強すぎないコシで、食べやすい麺 冷麺そのものを食べるのも久しぶりなので、いわゆる日本の冷麺とどう違うのかが正直よく分からなかったが、スープがやや甘めで、麺のコシがそれほど強くないといった感じだと思う。日本の冷麺とどう違うのか店の人に聞いたのだが、なぜかその答えをよく覚えていない。確か、そば粉を使わず小麦粉だけで作っていると言っていたような気がするのだが……。あとは、香菜(シァン ツァイ=パクチー)が乗っているのが違うということだった。

付け合せの惣菜類は、さすがに中国人にしか出せない味だった 中国のネット百科事典「百度百科」で調べたところによると、中国の朝鮮族の人たちは、旧正月の4日目の昼食や誕生日に鶏西冷麺を食べて、長寿を願ったそうである。日本でいうところの年越しそばみたいなものなのだろう。また、中国東北地方といえば冬の間は厳寒となるが、そんな時期でも鶏西では、冷麺の店は客でいっぱいになるのだという。

 日本の冷麺との違いははっきり分からなかったが、周りは中国語だらけ、惣菜は中国の味ということもあって、中国時代のことを思い出させてくれた昼食だった。
 

 

佐久間賢三
9年5か月に及ぶ中国滞在から帰国してきて早5年半以上。日本での生活をなんとか続けながらも、外国のあの刺激的な日々が恋しくなってきている今日この頃。世界的なコロナ禍の影響でしばらくは海外旅行に行けそうもなく、雑誌の海外旅行特集や昔の写真を見てウサを晴らそうとするも、かえってウップンが溜まるという悪循環の中で身悶えている。