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吃貨美味探訪記 No.148(大馬編その10)「え?これがワンタン麺?──乾撈雲吞麵」

 イポーでの朝、いつものようにみんなで車に乗って食堂に行くと、「ワンタン麺でいい?」と聞かれた。いつもお任せなので「もちろん」と答えたところ、予想外のものが出てきた。日本人が想像するワンタン麺とはまったく違うものだったのである。

2種類あるマレーシアのワンタン麺

 以前、中国各地でのワンタンの名称の違いについてご紹介したことがあるが、広東語では繁体字で「雲吞」となり、読み方は「ワンタン」となる。そのワンタンが入った麺が「雲吞麵」(ワンタンミン)となるわけだが、マレーシアではこれが「Wantan Mee」(またはWonton Mee)となり、麵の部分だけ閩南語(福建省南部の言葉。福建省南部からは、広東省同様、多くの海外移民が出ている)の影響が出ている。

 で、これはもう一つ余談だが、この原稿を書いていて気づいたのが、中国語のピンイン打ちで出てくる雲吞(yuntun)の「吞」の漢字。日本語のローマ字打ちで「wantan」と打って出てくる雲呑の「呑」と、微妙に違うのである。上の線が、中国語では真横の一本線、日本語だと左下にはらう線になっている。まあここではどうでもいいことなので、これについては宿題として後日調べておくことにする。

 さて、イポーの食堂で出てきた予想外のワンタン麺がこれである。

一般的には麺の上に叉焼が乗せられていることが多いらしい ソース焼きそばのような麺と、ワンタンスープの組み合わせ。これが、こちらでのワンタン麺、いや、雲吞麵なのである。実はマレーシアの雲吞麵には2種類あって、一つは日本でもお馴染みの、スープと麺とワンタンが一つの丼に一緒に入ったものである。

 そしてもう一つが、上の写真にあるような麺とワンタンスープが別々になったもので、これは「乾撈雲吞麵」(ゴン ロウ ワン タン ミン)とも呼ばれている。「乾撈」はスープなしの混ぜ麺に使われることが多い言葉で、標準中国語では「拌麵」(バン ミエン)と呼ばれることのほうが多い(ただし、桂林米粉も汁なしは乾撈と呼ばれていた記憶がある)。

 肝心のお味のほうは、ワンタンスープのほうは予想どおりの味。スープが日本のものよりやや薄味か。で、意外なのが麺のほうである。見た目からするとソース焼きそばのようで味が濃そうだが、食べてみると、醤油味で、意外にあっさりした味となっている。

 ソース焼きそばを朝ご飯に食べる人は少ないだろうが、これなら朝に食べても違和感がない。これだけではやや物足りなければ、下のような点心系のおかずも食べれば、お腹も大満足である。

左奥が排骨(パイグー)、右が焼売、左手前は……なんだったか覚えていないが、魚のつみれ系のように見える こういった食べ物の写真を見るたびに、マレーシアに行きたくなる。早くまたマレーシアに行ける日が来ることを望むばかりである。

おまけカット1 イポーの旧市街近くに、古い建物の壁にさまざまな絵が描かれた一角がある

おまけカット2 このようなユーモラスなものから、もっと民族色の出たものまでいろいろある

佐久間賢三
9年5か月に及ぶ中国滞在から帰国してきて早5年半以上。日本での生活をなんとか続けながらも、外国のあの刺激的な日々が恋しくなってきている今日この頃。世界的なコロナ禍の影響でしばらくは海外旅行に行けそうもなく、雑誌の海外旅行特集や昔の写真を見てウサを晴らそうとするも、かえってウップンが溜まるという悪循環の中で身悶えている。