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吃貨美味探訪記 No.183(出張グルメ編その1)「屋台村で食べた揚げたてをもう一度──鹿児島市・さつま揚げ」

 今回から新たなシリーズとして、これまで国内出張先で食べてきた地方の料理を、その時の思い出とともにご紹介していく。記念すべき第1回は、鹿児島市にある屋台村で食べた、さつま揚げである。

 これまで毎月第1土曜日の当コラムは、日本で食べられる本格中国料理をご紹介してきたが、外に食べに行くヒマがなかなか取れずネタが尽きたのと、他にも本格中国料理を専門に紹介するサイトがいくつか出てきたので、お役御免といったところである。今後、あまり紹介されることのない料理を食べた時に、散発的に取り上げていこうと考えている。

釜で温めてから出す焼酎の水割りがまた格別

 鹿児島県の南西端にある南さつま市に行った時のこと。鹿児島空港から空港バスで市内の加世田バスターミナルまで向かった。

鹿児島空港の建物の外に出ると、天然温泉の足湯が

要件を終えると、そこから路線バスに乗って鹿児島市に向かった。下校した高校生たちと同乗するなか、座席に座っていると、あっという間に眠りに落ちた。ふと目が覚めると、あらかたの高校生たちはすでに下車していた。

加世田バスターミナル。南さつま市にはかつて鉄道路線が走っていた

 路線バスなのであちこちでバスは止まり、1時間半ほどかけてようやく鹿児島中央駅に到着。地方のバスに乗ったのはそれが初めてで、路線バスでもそんなに長い時間走る路線があるのかと、驚いた記憶がある。そこから路面電車に乗ってホテルのある場所まで向かった。

鹿児島市内を走る路面電車

 日が暮れると、路面電車に乗っている時に途中で見かけた屋台村に行ってみた。

鹿児島中央駅の近く、路面電車の高見橋駅から徒歩1分のところにあった「かごっまふるさと屋台村」

細い路地の間にもテーブルが並ぶ

 何軒も小さな店が並ぶなかで、どうしてその店を選んだのか覚えていない。店内のカウンターがコの字になっていたのが気に入ったのかもしれない。もしかしたら、そのカウンターの中にいたのが若い女性店員さんだったからかもしれない。

10人入れるかどうかの小さなカウンター

 頼んだのは、枕崎で獲れたカツオの刺し身とさつま揚げ。他にも何か頼んだと思うが、覚えていない。そして酒は焼酎のお湯割り。

枕崎のぶえん鰹は、弾力性のある歯応えと鮮やかな赤みが特徴だとか

関東で一般的な平べったいさつま揚げとは違い、コロコロした形で、ちょっと見には唐揚げのよう

 さつま揚げは、関東の人間にとっては惣菜店やスーパーでパックで売られていて、煮物やおでんなどに入っているものである。しかし、本場・薩摩のさつま揚げは違った。揚げたてがそのまま出てきた。そしてアツアツをほおばる。関東のさつま揚げとは全くの別物といっていい一品だった。

 そしてもう一つ、関東とは違ったのが、焼酎のお湯割りである。だが、正確に言うとお湯割りではない。水で割った焼酎を釜で直接温めて、それをグラスに入れて出してくれるのだ。これが鹿児島では当たり前のようだ。

一杯一杯、焼酎を釜で温めて出してくれるのがたまらない

日本酒のように、コップからあふれるほど注いでくれる それが珍しくて、何杯もおかわりしてしまった……というのは表向きの理由で、実際のところは、現役の大学生でもうすぐ卒業だというアルバイトの女性店員さんが、その度に笑顔でグラスを渡してくれるのが嬉しくて……というのが本当の理由である。楽しく酒を飲み、すっかり飲みすぎて、翌朝がちょっとつらかった。

 この原稿を書くにあたり改めて調べてみたところ、この屋台村、2020年末に閉鎖され、今はもうない。客が入らなかったわけではなく、オープン当初から10年程度の期間限定であることが決まっていて、その期限が来たからとのことだった。

 また鹿児島に行く機会があったら、ぜひまた飲みに行きたいと思っていただけに、残念なことである(※屋台村自体は、今年7月、鹿児島中央駅前の地下に復活している)。
 

佐久間賢三
9年5か月に及ぶ中国滞在から帰国してきて早5年半以上。日本での生活をなんとか続けながらも、外国のあの刺激的な日々が恋しくなってきている今日この頃。世界的なコロナ禍の影響でしばらくは海外旅行に行けそうもなく、雑誌の海外旅行特集や昔の写真を見てウサを晴らそうとするも、かえってウップンが溜まるという悪循環の中で身悶えている。