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中国美味紀行(四川編)―その6「このイソギンチャクみたいな食べ物は?――ガラス焼売」

“チャイニーズブレックファスト”。こうやって書くとなんだかお洒落な食べ物に思えてくるが、実際のところは、中国の朝食は貧弱というかシンプルだ。肉まん、お粥、油条(中華風揚げパン)、豆乳……以上。あとは地方によってそれにプラスアルファがあるていど。

 世界のグルメ大国といえば、フランスと中国が双璧として挙げられるが、フランス料理も朝食は非常にシンプルだ。カフェオレにフランスパン、以上。昼夜と美味しいものを食べるから、朝は簡単に済ましてしまうのかもしれない。

炭水化物ばかり

 で、成都人の朝食であるが、もちろん朝から麻婆豆腐を食べているわけではない。基本は上に挙げた肉まん、お粥、油条、その他もろもろ。というわけで、その三つを一気に頼んでみたのがこちら。

肉まんが2元(40円)、お粥が1.5元(30円)、油条が2元(40円)、しめて5.5元(110円) 中国の肉まんは、日本のものよりやや小ぶりなものが多いのだが、成都の肉まんは逆に、日本のものより一回りは大きい。中には肉がたっぷり。筆者がいつも食べていた店だけがそうなのか、他の店もそうなのかよく分からないが、表面がやや油っぽく、手で持って食べると手がベトベトになる。というわけで、みんな箸を使って食べることが多い。打包(ダーバオ=お持ち帰り)する場合はビニール袋に入って渡されるので、袋を持って食べることになる。

 写真右のお粥は、申し訳ていどに小豆が浮いている。これがカボチャのこともある。これにしょっぱい漬物がついてくる。不思議なのは、スプーンが出てこないこと。みんな箸でお粥を啜るように食べている。スプーンがあればもっとラクに食べられると思うのだが、誰も文句を言わずに箸で食べている。

 写真左奥は油条。一本をザクザクと3、4個に切ってから出てくる。これは特に味があるわけではなく、お粥につけたりして食べることになる。

 普通は、肉まんとお粥、または油条とお粥を頼む人がほとんどだが、欲張って三つ頼んでみたら、朝からお腹パンパン。しかも炭水化物ばっかり。中国の朝ご飯は、栄養的にはかなり偏っていると言わざるをえない。

ガラス焼売の名前の由来は?

 そして、こちらが今回の主役「ガラス焼売」である。中国語では「玻璃焼売」というのだが、玻璃はガラスのこと。だからガラス焼売。

成都の観光名所の一つである寛窄巷子の近くにある有名店「老号無名包子」の「玻璃焼売」6.5元(130円) 日本で焼売というと、横浜崎陽軒のシューマイのような短い円筒形をしているものがほとんどだが、筆者が知る限り、中国ではあの形の焼売は広東の飲茶で出てくる点心のエビ焼売くらい。成都や上海にある焼売は、こんな感じのイソギンチャク型だ。そもそも「焼売」という言葉、普通話(北京語)では「シャオマイ」だが、広東語では「シゥマーイ」と読む。つまり日本のシューマイは広東のものがオリジンなのかもしれない。

 で、どうして「ガラス焼売」というかというと、中の具にガラスが入っているから……ということはもちろんない。外側の皮がガラスのように透けているからということらしい。でも、どう贔屓目に見ても曇りガラスていどにしか見えないが……。

 お味のほうは薄味。これを酢醤油につけて食べると、非常好吃!(すごく美味しい) 豚の挽肉たっぷりだが、それほどしつこくなく、スルスルと入っていく。1個が日本のシューマイよりも大きく、8個食べたらお腹いっぱい。値段はちょっと高いが、週末あたりに食べるにはちょうどいいかもしれない。

 ま、いずれにしても、やっぱり肉と炭水化物だけ。朝から野菜を摂るという考えはないようである。
オマケカット。成都市一番の繁華街・春熙路。週末や観光シーズンは人でごった返す

佐久間賢三
中国在住9年5か月を経たのち、尻尾を巻いて日本に逃げ帰る。稼いだ金は稼いだ場所で使い果たすという家訓を忠実に守ったため(?)、ほぼ無一文で帰国。食い扶持を稼ぐためにあくせく働き、飲みに行く暇も金もない日々を送っている。日本の料理が世界で一番美味いと思っているが、中華の味も懐かしく感じる今日この頃。