中国美味紀行(四川編)―その14「名前は同じでも作り方が異なる2つの小吃──鍋魁」
- 2015/10/17 00:00
- 佐久間賢三
今回は、街中の軽食堂で気軽に買える四川独特の小吃(スナック)を2種類ご紹介。どちらも同じ名前なのだが、作り方がやや異なっているのが面白い。
街角で見つけた手作りおやつ
成都中心部の街中を歩いていると、店内で何かを作って売っている店を見つけた。奥ではおばちゃんが鉄板の上で平べったい円盤状のものを揚げている。店頭に並べられているものを見ると、サクサクとしたパイのような食べ物。1個買って食べてみたのがこちら。
これが四川名物の小吃「軍屯鍋魁」(ジュントゥングォクェイ)。成都市内北部にある彭州市(中国の場合、市の中にさらに市があったりするからややこしい)軍楽鎮というところが発祥の食べ物。軍楽鎮はかつては軍屯と呼ばれていたことから、この名がついたようだ。
小麦で作ったサクサクの生地の中に肉の餡が入っていて、甘い物がダメな人にはちょうどいいおやつ。この店で買ったものは隠し味にシナモンが入っていて、最初はよかったが、食べ終わる頃にはシナモンの味がしつこく感じたのが残念だった。
こちらはおやつというよりも軽い食事
上の鍋魁とはまたちょっと違う鍋魁がこちら。といっても、出来上がりが分かりづらいので、写真は外側のパンの部分を作っているところだ。
カマドで作ったパンの端に切れ目を入れて、そこに具を入れて食べる。いわば中国版ハンバーガーともいえる「鹵肉鍋魁」(ルーロゥグォクェイ)。1個7元(約130円)前後で、中にはさむ具によって値段が変わる。中は甘辛く煮た肉や回鍋肉など、いろいろ選べる。
これととても似たものに西安名物の肉夾●(●は食へんに莫。ロゥジァーモー)があるが、それとどう違うのかは分からない。肉夾●のほうは中国全土でポピュラーな食べ物となっている。1個食べるとけっこうお腹がふくれるので、おやつというより食事に近い。
どちらも「鍋魁」だが、作り方といい味といい、まったくの別物。共通しているのは、どちらも平べったい円盤状で、歩き食いするのにピッタリといったところか。中国ではこういう食べ物が意外に美味かったりするのが嬉しい。
佐久間賢三
中国在住9年5か月を経たのち、尻尾を巻いて日本に逃げ帰る。稼いだ金は稼いだ場所で使い果たすという家訓を忠実に守ったため(?)、ほぼ無一文で帰国。食い扶持を稼ぐためにあくせく働き、飲みに行く暇も金もない日々を送っている。日本の料理が世界で一番美味いと思っているが、中華の味も懐かしく感じる今日この頃。