中国美味紀行(四川編)―その17「(重慶・前編)やっぱり本場の味は違った──酸辣粉」
- 2015/12/05 00:00
- 佐久間賢三
言葉も文化も料理も四川と同じ
重慶は成都から南東に約270km、東京・名古屋間とほぼ同じ距離のところにある。成都と重慶の間は動車組と呼ばれる新幹線のような特急がグルリとやや遠回りして走っており、両都市を約2時間で結んでいる。重慶は行政区分的には“市”ではあるが、その面積は北海道とほぼ同じである。
四川省のすぐ隣にあり、かつては四川省の一部だったことから、言葉・文化・料理の面では四川省とほぼ同じ。重慶の方言は四川語だが、現地の人によると、同じ四川語でも重慶の言葉は力強くて男っぽく、成都のは柔らかくて女性っぽいらしい。関西弁でいうところの、大阪弁と京都弁の違いといったところだろうか。
料理の面でも、麻辣味がメインなところは四川料理と同じ。ただ、一般に四川料理と呼ばれているもののなかには重慶発祥のものも多く、なかでも有名なのが火鍋(フオーグオー)。まあ火鍋は中国のどこにでもあったりするが、麻辣火鍋といえば、やっぱり重慶が本場である。
重慶に来たら火鍋を。。。と思っていたのだが、一人で食べるのはちょっとツラい。最近は一人鍋などというのもあるらしいが、それはそれで侘びしいし、そんなものなら何も重慶でなくても食べられる。
写真を見て今さらながら後悔
というわけでまず食べたのが、同じく重慶が本場の「酸辣粉」(スアンラーフェン)。「粉」というのは、以前にも説明したと思うが、一般的には小麦以外の材料で作った麺のことを指す。酸辣粉の場合はサツマイモの粉でできている。
この酸辣粉も、おそらく中国各地で食べられているのではないかと思う。筆者がかつて住んでいた広東省の深圳は四川省からの移民または出稼ぎ者が多く、かなり普通の食べ物だ。その深圳で何度か食べたことがあるのだが、酸味、辛味ともにトゲトゲしく、それほど好きな食べものではなかった。
そして、本場の重慶で食べたのがコレだ。
そもそも酸辣粉はレストランで食べるような高級料理ではなく、そのへんの屋台や簡易食堂のようなところで食べるもの。そんなわけで、食べたのは無粋な紙容器入りのものとなった。
お味のほうはといえば、やはり辛い! 酸っぱい! でも、口をビリビリと刺激するようなトゲトゲしさはなく、どこか味に丸みを感じさせる刺激だった。これは一発で気に入った。“名物に美味いものなし”などとよく言われるが、これは本場のもののほうが美味かった。
そして、ブラブラと繁華街を一人で歩いて見かけたのがこちら。
こちらは見ただけで食べなかったのだが、数種類の食材を選び、それをスープで湯がいてもらって食べる「冒菜」(マオツァイ)の豪華版なんじゃないかと思う。冒菜はいってみれば簡易火鍋みたいなもので、気軽に食べられることから四川ではおやつや軽食としてポピュラーな食べ物だ。
こうやって写真を改めて見て、やっぱりあの時に食べておけばよかったと今は後悔している。
佐久間賢三
中国在住9年5か月を経たのち、尻尾を巻いて日本に逃げ帰る。稼いだ金は稼いだ場所で使い果たすという家訓を忠実に守ったため(?)、ほぼ無一文で帰国。食い扶持を稼ぐためにあくせく働き、飲みに行く暇も金もない日々を送っている。日本の料理が世界で一番美味いと思っているが、中華の味も懐かしく感じる今日この頃。