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中国美味紀行その24(アモイ編5)「海辺の土産物屋でしか見たことがなかったものが屋台街に──骨貝」

 海辺の土産物屋で売られているキレイな形・色の貝殻。その一つに「骨貝(ホネガイ)」がある。細長いトゲが骨のように並んだ奇妙ながらも美しい形。筆者も子供の頃、親に買ってもらった貝殻セットに入っていた骨貝をしばしば手に取って眺めたりしたものである。しかし、それがまさか食べられるとは、想像すらしていなかった──。

「ビーナスの櫛」を食す

 観光客が多く集まるアモイの繁華街、中山路から奥に入ったところに屋台街がある。アモイの海産物を使った料理をウリにした屋台が並び、夜になるといつも人で賑わっている。料理の値段も一皿10元前後(5年前の値段。約170円)と、観光地にしてはお手頃だ。

アモイの屋台街。この写真は古いもので、ここはすでに改修されて新しくなっている そこである時見つけたのが、なんと骨貝。屋台の前に並べられたトロ箱の中に、子供の頃に見たあの骨貝が無造作に、しかも大量に入れられていたのである。

 骨貝の英語名は「ビーナスの櫛(くし)」。標本や水族館でしか見られないものと思っていたが、なんと屋台の食材になっていたとは。まあよく考えてみれば、確かに貝類だけに食べられても不思議はないのだが。よくここで晩酌をしていた筆者は、いつもの屋台で迷わずそれを注文した。そして出てきたのがこれだ。

茹でられて出てきた骨貝。20個は入っていただろうか。これで10元か20元だった 巻き貝のようになっている部分に身が入っており、爪楊枝でほじくりだして食べる。味のほうは……これといった特徴もなく、強いて言えばサザエをあっさりとさせたような感じだった。味を楽しむというより、珍しさで食べるといったほうがいいかもしれない。
トゲトゲはそれほど長くない。記念に貝殻を1個持ち帰ったが、どこかに行ってしまった

オマケカット。アモイ島のすぐそばに浮かぶコロンス島。中国語名は鼓浪嶼(グーランユー)で、これを地元の閩南語で読むと「コーロンスー」となる。かつてここは外国租界となっており、日本領事館もあった。現在はアモイ一番の観光名所

佐久間賢三
中国在住9年5か月を経たのち、尻尾を巻いて日本に逃げ帰る。稼いだ金は稼いだ場所で使い果たすという家訓を忠実に守ったため(?)、ほぼ無一文で帰国。食い扶持を稼ぐためにあくせく働き、飲みに行く暇も金もない日々を送っている。日本の料理が世界で一番美味いと思っているが、中華の味も懐かしく感じる今日この頃。