中国美味紀行その27(アモイ編8)「台湾夜市の小吃がアモイでも──大腸包小腸」
- 2016/05/07 00:00
- 佐久間賢三
アモイは海をへだてて台湾に面しており(といってもその距離は約200km)、またアモイの方言(閩南語)は台湾語とほぼ同じであるため、台湾とは密接な関係を保っている。それは食文化についても同じで、アモイではさまざまな台湾の名物料理が食べられる。そして、台湾名物の食べ物といえば──。
アモイにもある夜市の屋台街
台湾人に言わせると、台湾の料理は中華圏の中で一番美味しいのだという。なぜなら、国民党が共産党に追われて台湾に移ってきたとき、中国の有名な料理人も一緒に連れてきており、その伝統とワザを受け継いでいるから。高級な広東料理で知られる香港の料理など目ではないとか(逆に香港人は、台湾の料理など香港の敵ではないと思っている)。
要はお国自慢なわけだが、台湾に美味しいものが多いのは事実である。特によく知られているのが、夜市の小吃。夜市は、夜になると屋台が通りに並び、さまざまな小吃を食べることができる食の天国ともいえる場所だ。
そんな台湾夜市の小吃が、アモイでも堪能できる。それが「台湾小吃街」だ。
夜の帳が下りるころ、屋台街に明かりが灯り、それに吸い寄せられるように人々が集まってくる。料理は一皿20元前後(約330円)で地元の料理に比べたら割高だが、ここに来るのはほとんどがアモイに来た観光客。財布の紐は緩みまくっており、みんな高めの値段設定も気にすることなくガンガン買っていく。
迷わず「もう1本!」
台湾のさまざまな名物小吃の屋台が並ぶなか、(筆者にとっての)一番人気は、なんといっても「大腸包小腸」。大腸が小腸を包む? 漢字を見るかぎりはホルモン料理の一つのように思えてしまうが、その材料がこれだ。
大腸と小腸は、臓物のことではなく、大きな腸詰めと小さな腸詰めという意味なのである。大腸包小腸は、この2種類のソーセージと野菜の千切りを使って作る。それがこれだ。
白くて大きい腸詰めをコッペパンのように縦切りして、そこに野菜の千切りを入れてから赤い腸詰めを挟む。つまりは腸詰めで腸詰めを挟んだホットドッグというわけだ。ただし腸詰めといっても白い腸詰めの中に入っているのはモチ米で、赤いほうが肉となっている。
肉の腸詰めは中国らしくやや甘い味付けで、それをモチ米の淡白な味わいが優しく包んでいる。その絶妙なバランスの組み合わせは、日本人にとって未知との遭遇。食べ終わったとたんに、指を舐めつつ「もう1本!」となること間違いない。いつか本場台湾の夜市で食べてみたいものである。
佐久間賢三
中国在住9年5か月を経たのち、尻尾を巻いて日本に逃げ帰る。稼いだ金は稼いだ場所で使い果たすという家訓を忠実に守ったため(?)、ほぼ無一文で帰国。食い扶持を稼ぐためにあくせく働き、飲みに行く暇も金もない日々を送っている。日本の料理が世界で一番美味いと思っているが、中華の味も懐かしく感じる今日この頃。