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中国美味紀行その28(アモイ編9)「素朴な甘味のシンプルなスイーツ──花生湯」

 アモイには、以前にご紹介した沙茶麺のようにピーナツを使った食べ物がいろいろあるが、今回ご紹介する食べ物も、同じくピーナツ系の食べ物である。しかし、沙茶麺同様、意外なピーナツの使い方をしている。

お米のお母さんはな〜んだ?

 筆者が中国で働き始めて間もないころ、中国人の若い同僚の子からナゾナゾを言われたことがある。「お米のお母さんはな〜んだ?」

 答えは「花」。そのココロは「花生米」だから。中国語がまだ拙かった筆者は、なんのことやらサッパリ分からなかったのだが、つまりは、花が米を生んだから、お米のお母さんは花ということらしい。この「花生米」というのは中国語でピーナツの意味で、このナゾナゾはそれとひっかけているわけだ。花生米は、さらに短く「花生」とも言う。

 そのピーナツを使った花生湯は、アモイの北隣にある泉州市が発祥の食べ物。「湯」は中国語では一般的にスープのことを指すが、花生湯はスープというか、どちらかというとスイーツに近い。それがこれである。

「花生湯」(3元=約50円)。観光客が多く集まるアモイの繁華街・中山路にある老舗飲食店「黄則和」のものが有名 皮をむいたピーナツが丸ごと、というか、半分丸ごとがたくさん入っている。作り方は簡単で、水に一晩漬けておいたピーナツを煮て、柔らかくなったら砂糖を加える。あとは風味づけにオレンジピールのペーストを入れる。以上。いたってシンプルな食べ物で、ピーナツはよく煮込んであるので口の中で崩れていくほど柔らかい。いってみればピーナツぜんざいみたいなものだろう。

 アモイの老舗飲食店「黄則和」はこれが名物で、この店を訪れる観光客のほとんどが、他の食べ物と一緒にこれも頼む。特に美味いというものではないのだが、ピーナツの風味と淡い甘さの素朴な味わいが、中国人たちの郷愁を誘うのかもしれない。

インドネシアのミー・ゴレンの由来?

 今回もう一つご紹介するのが、アモイで朝食としてよく食べられている「麺線糊」。こちらも泉州市が発祥だ。

「麺線糊」(5〜10元=83〜167円) 素麺のような柔らかい麺に、やや粘り気のあるアッサリ味のスープがからみ、胃袋を優しく温めてくれる。飲み過ぎた翌日の朝食にはピッタリの味わい。これだけでは物足りないという人は、中華風揚げパンの油条も一緒に。スープをたっぷり吸い込んだ油条が口の中で泳ぎだし、喉の奥までスープの旨味を届けてくれる。

 ちなみに、「麺」(簡体字では面)という字は普通話では「ミェン」と読むが、アモイの方言である閩南語では「ミー」と読む。東南アジアで麺類を「ミー」と呼ぶのは(例:インドネシアの焼きソバはミー・ゴレン)、アモイから東南アジアに渡った人たちが現地に麺類を伝えたからかもしれない。

 さて、これまで9回にわたってアモイの食べ物をご紹介してきたアモイ編も、10回目となる次回が最終回となる。
オマケカット。「中国で一、二を争う美しいキャンパス」として知られるアモイ大学のキャンパス。緑が多く、山や小さな湖もある。写真の建物は学生寮

オマケカットその2。キャンパスを出ると、目の前はビーチ!

佐久間賢三
中国在住9年5か月を経たのち、尻尾を巻いて日本に逃げ帰る。稼いだ金は稼いだ場所で使い果たすという家訓を忠実に守ったため(?)、ほぼ無一文で帰国。食い扶持を稼ぐためにあくせく働き、飲みに行く暇も金もない日々を送っている。日本の料理が世界で一番美味いと思っているが、中華の味も懐かしく感じる今日この頃。