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中国美味紀行その31(上海編2)「3点セットで朝から大満足──上海の朝食」

 概して中国の朝食はあまり美味しくない。しかも簡単。お粥、肉まん、豆乳など、日本人からすると、こんなんで朝から元気が出るのか?というようなものが多い。しかし、上海には美味い朝食セットがあった。実際にはセットで売られているわけではないのだが、これを食べれば朝から大満足になること間違いない。

これがあると、朝食がさらに豪華に

 上海の朝は早い……。昔のネスカフェだったかのCMではないが、住宅街の食堂では、朝早くから開店して、近隣の住民たちに朝食を提供している。中国人は朝ごはんを家で作るということはあまりないようで、たいていは出来合いのものを買ってきて食べている。

 筆者が上海に住んでいたころ、朝ごはんを食べに時折行っていた店は、朝7時の開店とともに、近所のジジババたちが列をなし、朝食を買っていく。食堂の中で食べていく人もいるのだが、多くが家族のために食べ物を「打包(ダーバオ=お持ち帰り)」していく。

食堂は朝7時すぎでこの行列。先にお金を払って食券をもらい、それを窓口に出す この店で筆者が大好きだった朝食の黄金セットがこれだ。

これで合計5.2元(80円ちょっと)と、上海の物価からしてもかなり安い。普通ならこの2倍くらいはする 上にある油条は中華風揚げパンで、中国の朝食によく食べられている。この店では揚げたてが食べられる。右にあるのは豆乳スープ。豆乳は中国では朝の飲み物として牛乳以上によく飲まれているが、たいていは甘みがつけられたもの。しかしこの店では、軽く塩味がつけられた豆乳スープとして食べることができる。しかも油条のスライスまで入っている。

 もうこれだけでも十分な朝食なのだが、さらに一つ、上海ならではの朝食といえるのが、左にある生煎(シェンジエン)である。これが、上海の朝をさらに美味しいものにしてくれる。日本の朝食でいえばアジの干物、イギリスの朝食ならベーコン&エッグにあたるだろう。

食べ方に気をつけないと、意外に危険

 これは、前回ご紹介した小籠包と同様、皮の中に肉餡と煮こごりのスープが入ったもので、小籠包よりも皮が厚く、しかも蒸し焼きにしている。小籠包は1個まるごと口の中に放り込むのが醍醐味、と前回書いたが、小籠包より二回りは大きい生煎でそれをやったら口の中が大火傷を負うこと間違いない。

 この生煎は、食べ方に少しコツがいる。

中はこのように肉餡がたっぷり。見えないが、下のほうにはスープもたっぷり まずは上のほうの皮を少しだけかじって穴を開け、そこから中のスープを啜って飲む。それから少しずつかぶりついていく。スープを啜らずにいきなりかぶりついたりすると、皮の隙間から熱いスープがピューッと飛び出してきて、鼻の頭を火傷したりするのだ。たとえ火傷をしなくても、服が汚れてしまうこともある。

 この生煎は、朝食だけではなくおやつとしてもよく食べられていて、庶民的な商店街を歩いていると、売っている店をよく見かける。上海に行く機会があったら、ぜひ食べていただきたい食べ物の一つである。
オマケカット。上海に今も数多く残る、昔ながらの集合住宅街「弄堂(ロンタン)」

佐久間賢三
中国在住9年5か月を経たのち、尻尾を巻いて日本に逃げ帰る。稼いだ金は稼いだ場所で使い果たすという家訓を忠実に守ったため(?)、ほぼ無一文で帰国。食い扶持を稼ぐためにあくせく働き、飲みに行く暇も金もない日々を送っている。日本の料理が世界で一番美味いと思っているが、中華の味も懐かしく感じる今日この頃。