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中国美味紀行その35(上海編6)「中国人にとって昔懐かしい味のアイス──東北大板」

 上海の夏は、東京と似ていて、非常に蒸し暑い。木陰に入っても不快度はマックス状態で、アスファルトからの放射熱でサウナに入っているような気分になってくる。そんな時に食べたくなってくるのが冷たいアイス。まだまだ厳しい暑さが続きそうだが、今回は上海で2年前に大人気となった格安アイスをご紹介する。

独特の手法で販売ルートを開拓

 2年前の夏、上海を含む中国の一部の都市で爆発的なヒット商品となったアイスがあった。その名も「東北大板」。中国東北部の黒竜江省にある「紅宝石」という企業のアイスキャンディだ。味はバニラ、ミルク、イチゴ、チョコの4種類があり、1本3元。日本円にして50円弱と、中国の物価レベルからしても安い部類の商品となっている。

冷蔵庫は店内ではなく、店の軒先に置かれていることが多い その販売方法は独特で、スーパーや大手コンビニに卸すのではなく、小売店に専用の冷蔵庫を3万円弱の価格で提供し、その電気代も企業側が月に60元補う。商品の卸価格は1.8元となっている(別の報道では2.5元となっていた)。普通の企業なら宣伝費のお金を使うところだが、この企業はその費用を販売ルートの開拓に使用したという。

 人気となった理由は、多くの中国人にとって昔懐かしい味だからとか。パッケージのデザインもシンプルで、昔っぽい味を出している。そして、ヒット商品が生まれると、すぐさまニセモノが出てくるのが中国というところ。このたった3元の商品にも、ニセモノがすぐに市中に出回ったようだ。

冷蔵庫の脇には、「ニセモノにご注意」のポスターも(右側)

値段のわりにはなかなかの味

 というわけで、筆者も近くの売店で買ってみた。まとめて4つの大人買い。とはいっても、4つで200円もしないのだから、子どもでもまとめ買いできるのだが……。

2年前は一部の大都市だけだったが、おそらく今では多くの都市に出回っているだろう お味のほうは、白い紙に包まれて一番高級そうなバニラは、まあ普通のバニラ味。その他も、特に可もなく不可もなく。日本のガリガリ君より柔らかい。ただ、3元という値段を考えると、悪くない味といえる。で、昔懐かしい味かどうかというと、昔の中国のアイスを食べたことがないので、判断しようがない。まあ中国人がそう言うのだから、そうなのだろう。

 あれから2年たった今でも、上海の街中ではこの東北大板は売られているようだ。相変わらずニセモノが出回っているのも同様。原稿を書いているうちに、上海のあのうだるような暑さを思い出してきた。でも、9月ともなれば、秋はもう近い。
オマケカット。市場で売られている、そら豆をさらに大きくしたような「日本豆」。「正宗」(正真正銘の、本場の)などと書かれているが、なぜ「日本」の名前が付いているのか分からない

佐久間賢三
中国在住9年5か月を経たのち、尻尾を巻いて日本に逃げ帰る。稼いだ金は稼いだ場所で使い果たすという家訓を忠実に守ったため(?)、ほぼ無一文で帰国。食い扶持を稼ぐためにあくせく働き、飲みに行く暇も金もない日々を送っている。日本の料理が世界で一番美味いと思っているが、中華の味も懐かしく感じる今日この頃。