SecurityInsight | セキュリティインサイト

中国美味紀行その37(上海編8)「上海の秋の味覚とそれに欠かせない飲み物──上海蟹」

 上海の秋の味覚といえば、代表的なのが上海蟹。日本だと高めの中華レストランに行かないとなかなか食べることはできないが、上海では高級品からお手頃価格のものまで、さまざまなものが市場に並んでいる。これからがまさに上海蟹の季節となるわけだが、上海蟹を食べる時に欠かせない飲み物がある──。

旧暦9月。いよいよ始まる上海蟹の季節

 上海近郊の湖で獲れたものが有名であることから、日本では上海蟹と呼ばれているが、中国では一般的に「大閘蟹(ダーヂャーシエ)」と呼ばれている。一番有名な産地は、上海のお隣にある江蘇省蘇州市の周辺にある陽澄湖と太湖で、ここで養殖されたものは高値で取り引きされている。もちろんその周辺地域でも養殖されており、そういったものは庶民的な価格で市場に並べられることになる。

 上海蟹の季節は秋と書いたが、現地ではもっと細かく旬が決められていて、“旧暦”の9月はメスが美味しく、10月はオスが美味しいとされている。旧暦の日付は実際のカレンダーとは毎年ずれているが、だいたいのところでは、それぞれカレンダーの10月と11月にあたる。今年は10月1日が旧暦の9月1日にあたり、この日がまさに上海蟹の旬のスタートとなるわけだ。蒸し上げられた上海蟹の姿がこれ。

余談ではあるが、上海蟹を手足を縛らないで蒸すと、蟹は熱さのあまり蒸し器の中で暴れだし、大変なことになってしまうらしい 上海蟹は蒸したものを食べるのが一般的な食べ方で、蟹は生きたまま手足を縛られて蒸し器に入れられる。日本のカニの場合、足やハサミの部分の肉を食べるのがメインで、それに加えてカニ味噌も味わうというのが普通だが、上海蟹の場合はカニ味噌がメイン。その他の部分の肉はオマケのようなものだ。

紹興酒は中国を代表するお酒?

 蒸しあがった上海蟹は、お腹の部分の殻をパックリと開けて、中に入っている黄色いカニ味噌やオレンジ色の内子(卵)を取り出し、生姜の千切りを入れた黒酢につけて食す。カニ味噌の味は濃厚で、日本のカニのカニ味噌とはまた違った味わい深さがある。

 漢方医学的な考え方では、上海蟹は体を冷やす作用があるため、食べる際には体を温める作用のあるものを一緒に摂らないといけない。それが生姜であり、もう一つ欠かせないのが紹興酒。紹興酒は、上海蟹を食べる時にはマストともいえる飲み物なのである。

 紹興酒は上海から南西に約150キロほど行ったところにある紹興という町で作られている醸造酒で、主原料はモチ米。アルコール度数は約14度と、ワインとほぼ同じだ。紹興以外のところでも同じものは作られており、それらは一般的に「黄酒」と呼ばれることが多い。

 日本でも中華料理のレストランならどこでも紹興酒が置いてあるので、紹興酒は中国を代表するお酒で、中国のどこででも飲まれていると思われがちだが、実際は違う。上海とその周辺の華東エリアでは確かによく飲まれているが、広い中国、それ以外の地域ではマイナーな酒である。

 上海では、瓶入りのメーカー物が数多くスーパーに並んでいるが、街中の商店街にも専門店があり、そこでは甕(かめ)に入れられた紹興酒を量り売りで買うことができる。安いものだと500ミリリットルで100円以下、高いものでも300円ていどとお手頃な価格となっている。

店頭に並んでいる甕は値札を下げるためのお飾りで、酒が入った甕は店内にある 日本で飲める紹興酒は飲みやすいスッキリ味のものがほとんどだが、現地では甘いものやクセのあるものも多い。それを飲み比べてみるのも、紹興酒の楽しみ方の一つといえる。

 上海蟹と紹興酒、機会があればぜひ試していただきたい。ただし、日本で食べるとけっこうなお値段なので、そうそう食べられないのが残念なところだ。
オマケカット。上海中心部を流れる黄浦江の川沿いにある外灘(バンド)の夜景。ここに来るのは観光客がほとんどで、地元の上海人たちはほとんど来ない

佐久間賢三
中国在住9年5か月を経たのち、尻尾を巻いて日本に逃げ帰る。稼いだ金は稼いだ場所で使い果たすという家訓を忠実に守ったため(?)、ほぼ無一文で帰国。食い扶持を稼ぐためにあくせく働き、飲みに行く暇も金もない日々を送っている。日本の料理が世界で一番美味いと思っているが、中華の味も懐かしく感じる今日この頃。