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中国美味紀行その38(上海編9)「いろいろあったけど、今でも営業している模様──北朝鮮レストラン」

 タイトルを見ればお分かりになるように、今回は中国の美味とはまったく関係がない。料理だって、おそらく日本でも同じようなものが食べることができるだろう。しかし、北朝鮮アガシ(若い女性)たちが民族衣装を着てサービスしてくれるレストランは日本にはない。あの伝説は本当なのか、確かめに行ってみた。

“美形ぞろい”の伝説は果たして本当か?

 この北朝鮮レストラン、一部のマニアの方々からは半ば伝説のような存在として扱われていたりする。ここの従業員たちはどこも美人ぞろいだという噂だからである。ロイターの報道によると、このような北朝鮮レストランは世界に130店舗くらいあるらしい。つまりそれほど珍しい存在ではないわけだ。なかでも、北朝鮮のお隣さんである中国には、一番数多くあるようだ。

 上海の北朝鮮レストランには、中国人の友人に連れられて行った。行ったのは2014年の年末だったが、店内はほぼ満席。誕生パーティをやっているグループまであった。いつもなら、出てきた料理の写真は必ず撮るのだが、今回ばかりは料理よりも店内の様子のほうが気になって、すっかり忘れていた。唯一撮った料理の写真がこちら。

これは、おそらくスンデ。モチ米や豚の血、香味野菜などが入った腸詰めで、朝鮮半島北部の名物料理らしい 店内は、チマチョゴリを着た若い女性たちがウェイトレスとして働いている。みんな中国語が話せるので、コミュニケーションには困らない。こちらが日本人だと分かると、カタコトながらも日本語で話してくる人もいたほど。ネットで囁かれていたほど美人ぞろいというわけではなかったが、みんな愛想がよく、サービスもテキパキとしている。

 そして7時半になると、ショータイムが始まる。すると、さっきまでチマチョゴリ姿で店内を動き回っていた女性のうちの数人が、衣装に着替えてステージに上がってきた。そしてベースやキーボード、ドラムなどの演奏が始まり、チマチョゴリの女性たちが前に立って歌いだした。

聞いたことのない朝鮮語の歌だったが、歌詞の中で「カムサハムニダ〜」というのだけは聞こえた 続いては、キラキラしたドレス姿の女性たち4人が歌い出す。中国語の歌も歌っていた。

ショーが続くなか、数人のウェイトレスだけはそのまま残ってサービスを行なっていた 中国の北朝鮮レストランというと、今年4月に13人の従業員が集団脱走して韓国に亡命するという事件が起きた。自らの意志で脱北したのか韓国側に連れ出されたのか、当の韓国でも疑問が沸き起こっていたようだが、いずれにしても、北朝鮮の核開発をめぐって経済制裁が与えられ、外貨稼ぎの一端である世界各地の北朝鮮レストランも窮地に陥っているようだ。

 というわけで、この上海の店も、もしかしたらもうなくなっているかも……と思ってネットで調べてみたら、今のところはまだちゃんと営業しているらしい。
オマケカット。上海の外国人(主に欧米系)が夜な夜な集まるバー・ストリート。周りは普通の住宅街

佐久間賢三
中国在住9年5か月を経たのち、尻尾を巻いて日本に逃げ帰る。稼いだ金は稼いだ場所で使い果たすという家訓を忠実に守ったため(?)、ほぼ無一文で帰国。食い扶持を稼ぐためにあくせく働き、飲みに行く暇も金もない日々を送っている。日本の料理が世界で一番美味いと思っているが、中華の味も懐かしく感じる今日この頃。