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中国美味紀行その41(上海編12)「日本の焼き餃子とはちょっと違う──上海鍋貼」

 日本でもお馴染みの餃子は、言わずと知れた中国発祥の食べ物だが、日本では焼き餃子が一般的であるのに対し、中国では茹でた水餃子が主流で、次が蒸し餃子、焼き餃子はほとんど見かけない。しかし上海では、焼き餃子もよく食べられている。それが「上海鍋貼」(シャンハイ・グォティエ)だ。

焼き餃子には“昨夜の残り物”というイメージが?

 ご存じの方も多いかもしれないが、中国では餃子はこれだけで完結した一つの食事である。餃子は餃子だけで食べ、ご飯のおかずにして食べる人はあまりない。そのぶん、日本の餃子に比べて皮が厚く、10個くらいはペロリと食べてしまう。上海鍋貼も朝ご飯やおやつに食べられることが多いようで、朝ご飯を売っている屋台などに行くと、黒い鉄板の上にきれいに並べられた焼き立てを食べることができる。

「上海鍋貼」(鉄鍋の左上側に並んだもの。下側は生煎)4つで5元(80円)前後 上海鍋貼のことを焼き餃子と書いたが、日本の焼き餃子のように油たっぷりで炒めるように焼くのとは違い、上海鍋貼は蒸し焼きに近い。文字どおり、鍋に貼られるようにして焼かれているのである。

 余談ではあるが、中国で焼き餃子というと“残り物の処理”というイメージがあるという。それは、食べ残した水餃子や蒸し餃子は翌日にフライパンで炒めて食べることが多いからで、これらは鍋貼ではなく、「煎餃」などとも呼ばれている。かつて日本の大手餃子チェーンが焼き餃子をウリに中国に進出したが、焼き餃子の残り物イメージを払拭することができなかったからか、撤退の憂き目に遭っている。

 ちなみに筆者は、上海鍋貼がそれほど好きではない。同じ食べるなら、以前ご紹介した生煎のほうを選ぶ。なぜなら、焼きあがってからちょっと時間が立った鍋貼は、皮の部分がゴワゴワに固くなってしまい、あまり美味しくないからである。

 上海には鍋貼や生煎のほかにも、鉄板で蒸し焼きにした小吃がいくつかある。上海中心部にある古い住宅街を散策していたとき、路上で売られていたのがこれ。

こちらは1個ずつ買うことができる。1個1.5元(8円) 屋台にこの食べ物の名前が書いてあったと思うが、写真に撮っていないので、名前が分からない。見た目はあまり餃子と変わらないが、やや太り気味な感じだ。

中の具はこんな感じ。安いだけあって肉は入っていない。けっこう大きく、これだけでお腹がふくれる 水餃子は水餃子で美味しいが、焼き餃子に関してはやはり日本のほうが美味しいと思う。同じ中国発祥である日本のラーメンが上海でも大人気だが、焼き餃子にビールの快感は、なかなか中国人には伝わらないようである。
おまけカット。上海の中心部にある、上海でもっとも古いエリア。昔ながらの古い長屋が並ぶ

おまけカットその2。その長屋街の中のところどころに必ずある「煙紙店」。煙はタバコ、紙はトイレ用のちり紙のこと。今でいうコンビニのような存在

佐久間賢三
中国在住9年5か月を経たのち、尻尾を巻いて日本に逃げ帰る。稼いだ金は稼いだ場所で使い果たすという家訓を忠実に守ったため(?)、ほぼ無一文で帰国。食い扶持を稼ぐためにあくせく働き、飲みに行く暇も金もない日々を送っている。日本の料理が世界で一番美味いと思っているが、中華の味も懐かしく感じる今日この頃。