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中国美味紀行その43(上海編14)「食べてみたいのはやまやまなのだけど──観光地の小吃」

 上海には数多くの観光スポットがある。春節(1月下旬〜2月上旬)や国慶節(10月1日)といった長期休暇ともなると大勢の観光客が押し寄せるのだが、今回はそういった場所で食べられている小吃をご紹介しよう。

いったいいつ作られたのか、軒下に何時間並べられているのか

 上海は中国一の大都会であると同時に有数の観光地でもある。長期休暇期間には全国各地から観光客が押し寄せ、外灘(バンド)、南京東路、豫園といった市内中心部にある観光名所はお上りさんで立錐の余地もないほどになる。これは比喩ではなく本当である。前に歩くのも困難なほど混雑する。

 その一方で上海には、郊外にも観光名所がある。なかでも代表的なのが、上海の中心部から西に50キロほど行ったところにある水郷・朱家角(ヂュージァージァオ)だ。上海から離れた周囲の地域には、このような水郷が数多くある。特に朱家角は上海からバスで1時間ほどということもあって、上海に来た観光客がさらに足を伸ばして行くことが多い。

朱家角。三国志の時代(3世紀ごろ)にはすでに集落ができており、その後、市場などができて発展していったという

川を中心に水路が巡らされており、手漕ぎの小舟が水路を行き交う

 朱家角では、観光客を乗せた小型の船が行き交う狭い水路の両側に、昔ながらの雰囲気を残した2階建ての建物が並ぶ。その奥にはさらに細い路地が入り組んでおり、そこには観光客相手の土産物屋や食堂、食べ物・飲み物を売る店が軒を連ねる。たいていの観光地はどこもそうだが、要は観光客に金を落とさせるための場所でしかない。

細い路地には土産屋や食堂が並ぶ

 そこで売られている食べ物は、歩きながらでも食べやすい小吃が多い。上海の場合、そもそも料理の味付けが濃くて甘めなので、自然と小吃も同じようなものが多い。その代表的なものがこれだ。

 豚足は中国各地で食べられているので、この食べ物が上海独自とはいえないが、味付けはおそらく上海風の甘辛い味になっていると思われる。“思われる”などと書くのは、食べたことがないから。屋台のその場で作られているものはよく食べるが、長時間軒下に並べられ、いつ作ったのか分からないものは食べる気が起こらない。

 そしてもう一つ、朱家角よりも近く、地下鉄で行ける水郷で見かけた小吃がこちら。

鶏?それとも鳩?の姿焼き。見た瞬間に食べる気がなくなるが、出来たてはけっこう美味いと思う

 なにもそんなところに串を刺さなくても……と思ってしまうが、長い首を安定させて食べやすくするには、目の部分に指すのが一番いいからだろう。これもやはり手を出さなかったが、中国人の若くてかわいらしい女の子が、串を持って肉をバリバリ喰らいながら歩いているのを見たとき、やはり中国人女性のたくましさには敵わないと思った。

上海の屋台でよく見かける鍋貼と小籠包

 鍋貼(グォティエ=焼き餃子)や小籠包(シァオロンバオ)も上海ならではの小吃で、至るところで見かける。こちらは比較的安心して手が出せる食べ物だ(材料に何を使っているのか分からないという不安はあるが、それを心配していたら中国では何も食べられなくなってしまう)。

 本当は、こういった観光地では小吃を食べながら歩き回るのが一番楽しいのだが、やっぱり食事はレストランに入って食べたほうがよさそうである。
おまけカット。上海中心部にある観光地・田子坊(ティエンズファン)の、国慶節の時の様子。歩くのも一苦労

佐久間賢三
中国在住9年5か月を経たのち、尻尾を巻いて日本に逃げ帰る。稼いだ金は稼いだ場所で使い果たすという家訓を忠実に守ったため(?)、ほぼ無一文で帰国。食い扶持を稼ぐためにあくせく働き、飲みに行く暇も金もない日々を送っている。日本の料理が世界で一番美味いと思っているが、中華の味も懐かしく感じる今日この頃。