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中国美味紀行その44(上海編15)「春節の大晦日は家族団欒で──年夜飯」

 中国では1月1日の元旦よりも旧正月、いわゆる春節のほうを盛大に祝う。中国では公式には1週間の休みとなり、故郷を離れて仕事をしている人や大学生はこの時期に故郷に帰って春節を家族とともに過ごす。日本では大晦日の夜に家族でソバを食べる習慣があるが、中国でも春節の大晦日にあたる除夕(チューシー)の夜に一家そろって豪華な食事をする「年夜飯」は重要なイベントとなっている。

家族一緒に「春晩」を見ながら年夜飯を食べる

 ご存じのとおり、春節の基となっている旧暦は、月の満ち欠けの周期となっているため、現在使われている新暦とは1年の進み方が異なる。そのため春節も年によって日付が異なり、だいたい1月中旬から2月中旬くらいの間にやってくる。近年でもっとも早かった春節は2004年の1月22日で、もっとも遅かったのは2015年の2月19日、つまり年によって1か月近くの差があることになる。

 今年2017年の春節は1月28日が初日で、中国の公式カレンダーではその前日の27日から2月2日までの1週間が春節休みとなっている。

 つまり、この原稿がアップされた1月21日の時点では、中国は“年末”の時期にあたっており、この時期、中国の人たちは春節に向けた準備で忙しくなる。なかでも春節の間に食べるための食事の準備が重要で、日本の御節料理と同様、前もって作っておく必要があるのである。そのためこの時期になると、町の通りや市場では、春節料理の素材が一斉に売られ始める。上海でのその模様がこちらである。

路上では、干し肉や干し魚の“開き”を大量にぶら下げて販売

市場では大きな魚の干物も

 そして春節前日である「除夕」の夜には、日本の紅白歌合戦にあたる「春節聯歓晩会」、略して「春晩」(チュンワン)というテレビ番組を家族一緒に見ながら「年夜飯」を食べることになる。この「春晩」は紅白に分かれての歌合戦方式ではなく、中国や台湾、香港などの有名どころの芸能人が集まり、歌あり、漫才あり、ダンスあり、寸劇ありのバラエティに富んだ内容となっている。

 かつては視聴率が9割を超えるという“お化け番組”だったが(というか、それしか見るものがなかった)、最近は若者たちにそっぽを向かれつつあり、このへんも日本の紅白歌合戦とよく似ている。

 上海に住んでいたとき、除夕の夜に上海人の友人の家に招かれ「年夜飯」をご馳走になったことがある。お母さんの手作りの料理がテーブルいっぱいに並び、最後はもう何も食べられないほど満腹になって家に帰った。その時の料理がこちら。

十品以上がテーブルに並ぶ

 家に帰る頃には、近所で爆竹や花火が打ち上げられ、賑やかというよりうるさいほどの騒音となっていた。この爆竹や花火、普通の人が勝手にやっているもので、住宅街の真ん中で平気で花火を打ち上げたりして、よく火事が起こらないものだと思う(実際にはけっこう各地で火事が起こっている)。

路上では大量の爆竹が鳴らされ、団地の間に花火が打ち上げられる。PM2.5などの大気汚染が進むため、最近はほとんどの地域で爆竹や花火が禁止されている

 最近では春節に海外旅行に出かける人が増えてきており、日本にも多くの中国人観光客がやってきて“爆買い”をしていたのはご存じのとおり。それでも多くの中国人にとって、故郷で家族とともに春節を過ごすことは、1年のうちでもっとも重要な行事となっている。
翌日は春節初日。日本の初詣と同様、春節期間中には多くの人がお寺に行き、“商売繁盛”を祈願する

佐久間賢三
中国在住9年5か月を経たのち、尻尾を巻いて日本に逃げ帰る。稼いだ金は稼いだ場所で使い果たすという家訓を忠実に守ったため(?)、ほぼ無一文で帰国。食い扶持を稼ぐためにあくせく働き、飲みに行く暇も金もない日々を送っている。日本の料理が世界で一番美味いと思っているが、中華の味も懐かしく感じる今日この頃。