SecurityInsight | セキュリティインサイト

中国美味紀行その45(上海編16)「日本より高くつくけど上海人たちも大好き──回転寿司」

 そろそろネタ切れの上海編、今回は上海人の間でも人気のある日本料理について。かつて上海には10万人もの日本人が住んでいたともいわれ、市内は数多くの日本料理店がある。以前ならば日本人だけを相手にしていても商売がほぼ成り立っていたが、多くの日本人が上海を去って帰国したため、今では中国人客に来てもらわないとやっていけない状態となっている。

一番人気のネタはやっぱりサーモン

 上海には現在、日本から数多くの飲食チェーンが進出している。これまで日本人が上海で経営してきた日本料理店とは違い、これらの飲食チェーンは最初から現地中国人をターゲットにした店舗展開をしている。

 そのなかの一つが、埼玉県に本社を持ち、2008年末に上海1号店をオープンした「がってん寿司」。1号店はやや交通の不便なところにあったものの、週末には日本人駐在員とその家族たちを中心に大賑わい。そのうちに中国人客も増えてきて、今では上海市内に7店舗、上海から近い蘇州に2店舗にまで増えている。

「がってん寿司」のカウンター席。右側の男の子の横顔が笑顔にあふれている(ように見える)

 中国には回転寿司チェーンがいくつもあるが、そのほとんどは現地企業の経営。出てくる寿司も、“なんちゃって寿司”がほとんどだ。そんななかでがってん寿司は日本企業による経営なだけに、日本とほぼ変わらない品揃えと味になっている。そんなところが、すでに日本料理を食べ慣れている上海人たちに受けているものと思われる。

 もう2年半も前のことになるが、中国人の友人を連れて久しぶりに店に行ってみた。相変わらず店はいっぱい。しかも中国人客がほとんど。日本人の板前さんが解体前の生のサーモンを掲げて客席にやってくると、そこからしばらくは写真撮影大会。食べるだけではなく、こういったイベント性ももたせることで、客を楽しませているのだろう。

写真撮影のために、じっとサーモンを掲げる日本人の板前さん。けっこう重いのでは

 日本と違うのは、サーモン系の寿司が圧倒的に人気なこと。サーモンがマヨネーズやチーズと一緒にあぶられたり、マンゴーと一緒に握られたりと、日本人からしてみれば変わりダネ寿司となってコンベアーを回ってくる。あとは、デザート類も種類豊富にグルグル回ってくるところも違うところか。

日本人好みの普通の寿司ネタは中国人には不人気。このホタテのあぶりも、メリーゴーランドの馬のごとくグルグルと何回も回っていた。1皿25元(約420円)

 料金体系は日本と同様、お皿の種類によって寿司の値段が変わってくる。一番安いかっぱ巻きやポテトサラダ巻きで1皿8元(約135円)、それからは13元(約220円)、17元(約285円)、19元(約320円)、25元(約420円)と上がっていき、一番高いものだと32元(約535円)もする。調子に乗って食べたりすると、下手したら日本より高くついてしまうほどだ。

 それでも、店内は中国人客でいっぱい。彼らは(おそらく)お皿の色を見たり数を数えたりすることなく、食べたい物を食べたいだけ食べているのだろう(食べる寿司のほとんどはサーモン系と思われるが)。

 これからはサーモンだけではなく、それ以外の寿司ダネにも人気が出てきたらと思うが、我々日本人とは違って、中国人は子供の頃から生魚を食べているわけではないだけに、蛋白な味の白身魚や光り物の味はなかなか分かりにくいらしい。しかし、親に連れられてこのような回転寿司を食べてきた子供たちが大人になる頃には、少しは“味が分かる”ようになっているかもしれない。

おまけカット。上海中心部にある“日本風”居酒屋。というか、もう日本の居酒屋そのもの。客の大多数は中国人

 次回は上海編の最終回をお届けする。
 

佐久間賢三
中国在住9年5か月を経たのち、尻尾を巻いて日本に逃げ帰る。稼いだ金は稼いだ場所で使い果たすという家訓を忠実に守ったため(?)、ほぼ無一文で帰国。食い扶持を稼ぐためにあくせく働き、飲みに行く暇も金もない日々を送っている。日本の料理が世界で一番美味いと思っているが、中華の味も懐かしく感じる今日この頃。