中国美味紀行その46(上海編17最終回)「2泊3日の長距離寝台列車の旅──車内の食事」
- 2017/02/18 00:00
- 佐久間賢三
上海編の最終回ながら、上海とは関係のない、長距離寝台列車での食事についてご紹介する。中国で長距離鉄道は単なる移動手段でしかなく、日本人のように鉄道の旅を楽しもうなどという人は少ない。ということもあってか、せっかく各地に特色ある食材や食べ物があるというのに、日本のような駅弁などない。では、長い旅路、乗客たちはいったいどんなものを食べているのだろうか。
北海道から九州までの距離を2泊3日で走る
中国は国土の面積が日本の25倍以上もあるだけに、長距離列車が走る距離も長い。ネットで調べてみたところ、中国国内を走る路線では広東省の広州からチベットのラサまで4980kmを54時間30分(2泊3日)かけて走る列車がもっとも長い。国際路線では北京からロシアの首都モスクワまで8984kmを145時間(7泊8日)かけて走る列車というのもある。さらには、貨物路線ではあるが、広東省の東莞からドイツのデュイスブルクまで1万3488kmを19日かけて荷物を運ぶというのもある。
筆者は中国で何度か長距離寝台列車に乗ったが、上海からだと、深圳との間を19時間(1泊2日)で結ぶ寝台列車に合計で2往復半、また寝台車両ではなかったが、上海を午前中に出発して14時間かけて湖北省の省都・武漢に夜遅く着く列車に乗ったこともある(さすがに14時間座りっぱなしは疲れる)。
上海からではないが、距離的にもっとも長かったのが、四川省南部の宜賓(イービン)から広州までの2043km。この距離は、新函館北斗から新幹線に乗って、東京と博多で乗り換えて熊本まで行くのとほぼ同じ距離。新幹線だと最速で9時間33分だが(乗り換え時間除く)、中国の長距離寝台列車はこれを2泊3日の34時間20分かけて走る。時間的にもっとも長かったのは、同じく四川省の成都から広東省の深圳まで(1973km)の37時間40分だった。
値段はそれほど高くないのだが……
前置きが長くなってしまったが、本題は2泊3日の間に車上で4〜5回は食べる食事である。多くの中国人の乗客たちが食べていたのは、乗り込む時に大量に持ち込んでいたカップ麺と果物、それにスナック菓子。お湯は車内に給湯器があるので、好きな時に食べられる。
大きな駅では10分以上停車することもあり、体を伸ばしがてらホームに降りると、いろいろな食べ物が売られており、なかにはお弁当を販売する屋台もある。その様子がこれ。
さすがに10元(現在のレートで170円弱)のお弁当は安いが、味のほうもそれなりで、不味くはないが美味くもない。まあ、野菜がいっぱい入っているから、いいことにしよう。
また食事の時間近くになると、車内販売のカートも通路を回ってくる。こちらは列車内にある厨房で作られた出来たてである。
ホームで買うお弁当に比べたら値段が倍なだけおかずも豪華だが、それでもやっぱり味は可もなく不可もなく。まあ、暖かいものが食べられるだけありがたいが、車内の食事が楽しみ……というほどのレベルではない。
車内販売では、これ以外にも飲み物やカップ麺、お菓子、果物を売るカートもときおり回ってくる。列車が終点の駅に近づいてくるにしたがって、売れ残った果物の値段が下がっていき、最後はほとんど投げ売りのような値段になるのが面白い。
こういう長距離列車で楽しいのは、車内で知り合った人たちとの交流。3日間一緒に狭い場所で一緒に過ごすだけに、仲良くなれれば暇つぶしにもなる。なかには持参した食べ物や果物をおすそ分けしてくれる人もいたりする。
若い女性がたくさん乗っていたりでもすれば極楽なこと間違いなしだが、残念ながらそういう機会には恵まれなかった。大学が休みに入る時期などであれば、列車で帰省する女子大生たちがいっぱい乗っている可能性があるかもしれないが……。
車内の食事に期待はできないが、中国の長距離寝台列車の旅も2、3年に1回くらいするぶんには悪くない。また中国に行く機会があったら、ぜひやりたいことの一つである。
これで上海編はおしまい。次回からは別の都市の美食についてご紹介していく。
佐久間賢三
中国在住9年5か月を経たのち、尻尾を巻いて日本に逃げ帰る。稼いだ金は稼いだ場所で使い果たすという家訓を忠実に守ったため(?)、ほぼ無一文で帰国。食い扶持を稼ぐためにあくせく働き、飲みに行く暇も金もない日々を送っている。日本の料理が世界で一番美味いと思っているが、中華の味も懐かしく感じる今日この頃。