SecurityInsight | セキュリティインサイト

中国美味紀行その49(深圳編3)「見た目はちょっと……でも味は最高の点心とは──飲茶(その2)

 飲茶を食べる前に食器を洗う“儀式”を終えてしばらくおしゃべりしていると、オーダーした点心がテーブルに次々と出されてくる。その多くは小さな蒸籠に入れられている。というか、材料を蒸籠に入れて蒸したものをそのまま出してくるのである。だから熱々。冷めないうちにいただこう。

お茶で平皿を洗わなかったそのワケ

 と、その前に。

 前回、食事を始める前の食器の洗い方をご紹介したが、とある人から「平皿を洗ってないじゃないか」というご指摘があった。よく見ていらっしゃる。でも、普通は洗わないのが正しい。なぜなら、この平皿には食べ物を乗せないから。

 この平皿はいわばゴミ置き場のようなもので、骨や皮などの食べかす、つまり食べない部分はここに置いていくのである。平皿が食べかすでいっぱいになると、それに気づいた店員が新しい皿と取り替えてくれる(店が忙しいときには、頼まないとやってくれないことも多いが)。

 というわけでようやく、今度は本当に、お待ちかね(?)の点心をご紹介していくことにする。

最初に食べる点心がこれですかぁ?

 まずはこれから。

 これは「榴蓮酥」、つまりはドリアンパイである。サクサク熱々の生地の中に、ドリアンの果肉がたっぷりと入ったパイだ。ドリアンといえば、ご存じの方も多いかと思うが、「果物の王様」とも呼ばれ、その匂いは強烈で、かなり好き嫌いの分かれる果物だ。しかし、パイの中に入っているドリアンの果肉からは、あの匂いは漂ってこず、上品な味わいになっていて、けっこう美味い。

 どちらかというと甘い味で、デザートにしたほうがいいのではないかと思うのだが、筆者の友人たち(女性が多い)は、なぜかこれを真っ先に頼んで、真っ先に食べる。ということで、最初にご紹介した。

 次からは適当な順番で取り上げていく。お次はこれ。

 これは「蝦餃」、エビ餃子である。見てのとおり、半透明な皮の中にプリプリのエビが丸ごと入っている。これも、飲茶になくてはならない一品。美味。下の紙にひっつかないようにするためか、ニンジンの薄切りが下に添えられていることが多い。

 お次は肉まん系のこれ。

 これは「叉焼包」、チャーシューまんである。中国のシャーシューは甘い味付けのものがほとんどで、とろみのついたタレの中にゴロゴロとチャーシューの小さな塊がたっぷり入っている。これまたマストの一品で、美味。だが、肉まん系なので、1個だけでもお腹が膨れてしまい、他の点心が食べられなくなってしまうので、いくら美味しくても注意が必要だ。1個の半分くらいがちょうどいい。

 次は肉系の点心を一つ。

 これは「黒椒牛排骨」(こんな感じの名前だったと思う)で、排骨(スペアリブ)を黒胡椒や醤油などで味付けしてある。ややスパイシーで、骨までしゃぶり尽くす。食べているうちに幸せを感じる。

 そして、今回のトリを飾るのがこれだ。

 これは「鳳爪」で、ニワトリの足、いわゆるモミジの部分である。点心の名前としては、「鳳爪」の前にいろいろと漢字がくっついていたが、よく覚えていない。店によっても違っていたと思う。日本ではモミジはラーメンのスープの出汁に使う程度で、ほとんど食べることはないが、中国では一般的な食材である。これを酢漬けにしたものは、おやつとしてよく食べられている。

 見た目が見た目なのでなかなか手が出しづらいが、勇気を出して食べてみるとこれがまた美味い。骨っぽいが肉の部分は柔らかで、前歯の先で小さな骨から肉をこそぎ落とすようにして食べるのだが、肉に味がよく染み込んでいて、一本食べるとまたもう一本に手が伸びる。筆者の好物の一つである。モミジはコラーゲンたっぷり。女性にもお薦めだ。

 これだけいろいろな料理が次から次へと出てくると、食べるのに夢中になって無口になってしまいそうだが、そんな時でも中国人たちはおしゃべりをやめない。他のテーブルの人たちも同様なので、レストラン内はワイワイガヤガヤと賑やか。飲茶は友人や一族とのコミュニケーションの場でもあるのである。
おまけカット。深圳中心部を横断する幹線道路。高速道路でもないのに片側5車線(その脇に補助道が2車線)もあり、信号もほとんどない

佐久間賢三
中国在住9年5か月を経たのち、尻尾を巻いて日本に逃げ帰る。稼いだ金は稼いだ場所で使い果たすという家訓を忠実に守ったため(?)、ほぼ無一文で帰国。食い扶持を稼ぐためにあくせく働き、飲みに行く暇も金もない日々を送っている。日本の料理が世界で一番美味いと思っているが、中華の味も懐かしく感じる今日この頃。