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中国美味紀行その50(深圳編4)「さまざまな調理法の点心を楽しむ──飲茶(その3)」

 前回に引き続き、飲茶の点心の数々をご紹介していく。飲茶にはさまざまな調理法の点心があり、バラエティに富んだ味わいを楽しむことができる。

右回りにすべきか、左回りにすべきか

 最初にいくつかの点心を頼んでしばらくすると、次から次へと蒸籠(せいろ)が出てくる。人数が多ければ、1種類の点心あたり2つから3つの蒸籠をオーダーすることになる。

 こういったレストランにある丸テーブルは、大きいものでは12人くらい座れるものもある。それだけテーブルが大きいと、遠くに置かれた料理には手が届かなくなってしまう。そのため中国のレストランでは一般的に、大きな丸テーブルの中央にはガラス製の大きな回転テーブルが置かれ、そこに料理が置かれていく。取りたい料理が自分から離れたところにあったら、この回転テーブルをぐるぐると回して、自分のところに持ってくることになる。

 この回転テーブルを回す方向、右回りなのか左回りなのか……という疑問が出てくる。ネットで検索してみると、「基本的には時計回り(右回り)」と解説しているサイトを見つけた。だが実際に中国人たちの様子を観察していると、そんなことはまったく頓着せず、みんな好きなように回していた。自分の右に取りたい料理があれば右回りにするし、左にあれば左回りにしているのだ。たまに、別の人と同時に反対の方向に回しそうになることがあるが、そのへんは阿吽の呼吸で譲り合って回している。つまり、回転テーブルの回し方のような細かいことは、中華料理ではあまり気にしなくてもいいようである。

一つひとつの料理を少しずついただいていく

 飲茶というと、以前であれば、積まれた蒸籠から湯気がもくもくとあがっているワゴンがテーブルの間を巡回し、客はそこから好きな点心を取っていくというスタイルの店が数多くあった。しかし今では、点心名が書かれた注文用紙に、食べたい点心の蒸籠数を書き入れてオーダーする店がほとんどである。

 飲茶の点心は、基本的には蒸したものがほとんどだが、揚げたもの、炒めたもの、茹でたものなどさまざまな種類がある。飲茶ではとにかくたくさんの種類の点心を食べるので、一つひとつの点心を少しずつ味わっていくことになる。

 今回、最初にご紹介するのが、肉系の蒸し物のこれである。

 これは「蒜香蒸排骨」、豚の骨付きあばら肉を細かくぶった切って、ニンニクをベースに味付けして蒸し上げたものである。ほのかなニンニクの風味と豚肉の甘さが口から鼻の穴へと通り抜け、えも言われぬ味わいを演出してくれる。これも飲茶では欠かせない一品だ。

 続いては、餃子系蒸し物のこちら。

 これは見た感じからして、おそらく「韭菜餃子」だと思う。韭菜とはニラのこと。つまりニラ餃子である。とはいえ、中の餡はニラだけというわけではなく、その他にエビとか豚肉が入っている。ニラは味にややクセがあるが、ニラ餃子にするとそれが抑えられ、上品な味わいに仕上がっている。

 そしてお餅系はこれ。

 これは「萝卜糕」で、これは中国語の簡体字なので日本語の漢字で書くと「蘿蔔糕」となる。といってもなんだかさっぱり分からないが、つまりは大根もちである。クニョクニョした食感が口腔内で心地よく踊り、淡白な味わいで箸休めにもちょうどいい。あくまでも著者の感覚だが、まあこれはあってもなくてもよい。大人数で食べに行った場合には頼むといった程度だ。

 炒め物の一つが、広東料理では定番のこちら。

 これは「炒河粉」。河粉は日本のきしめんのように平べったい麺で、小麦ではなく米から作られている。広東省では一般的な食材で、朝食によく食べられている。飲茶も午前中に食べることが多いので、つい習慣で、この炒河粉も一緒に食べたくなるのかもしれない。見た目の色はやや濃いが、味は薄味である。

 そして最後が、湯がいた野菜のこちら。

 これは「白灼生菜」で、白灼は茹でるを意味し、生菜はレタスのこと、つまり湯がいたレタスで、これにオイスターソースや醤油がかけられて出てくる。飲茶編の1回目で湯がいた青菜の点心をご紹介したが、それのレタス版。こちらも野菜っけが少ない飲茶では定番で、一般的に生野菜を食べない中華料理における、サラダのようなものである。

 地方から出てきた移民の多い深圳では、広東人だけではなく、外から来た人たちも郷に入れば郷に従えで、週末になると家族で飲茶を楽しんでいる。
おまけカット。深圳の副都心にある高層オフィスビル街。中央に見える建築中の高層ビルはすでに完成している。最頂部までの高さは600メートルで、現時点で中国では2番目に、世界では4番目に高い

佐久間賢三
中国在住9年5か月を経たのち、尻尾を巻いて日本に逃げ帰る。稼いだ金は稼いだ場所で使い果たすという家訓を忠実に守ったため(?)、ほぼ無一文で帰国。食い扶持を稼ぐためにあくせく働き、飲みに行く暇も金もない日々を送っている。日本の料理が世界で一番美味いと思っているが、中華の味も懐かしく感じる今日この頃。