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中国美味紀行その61(深圳編15)「マカオ遠征2 清朝末期から食べられている口滑らかなスイーツ──ミルクプリン」

 エッグタルトに続き、マカオを代表するスイーツのもう一つ、ミルクプリンを今回はご紹介する。ミルクプリンなどどこにでもあるじゃないかと思われる方も多いかもしれないが、マカオのミルクプリンはそれなりに歴史がある特別なスイーツなのである。

単純な材料と作り方だが、その味わいは絶品

 ミルクプリンは中国語で「双皮奶」(普通話:シュアンピーナイ、広東語:ソンペイナイ)と呼ばれており、マカオで有名な双皮奶のお店が「義順牛奶公司」である。「義順」が名前で「牛奶」はミルク、「公司」は会社という意味で、自社の牧場を持ち、新鮮な牛乳を使ってミルクプリンを作っている。

マカオの中心部にある義順牛奶公司のお店(この店舗はすでにない)。今ではマカオ内に数店あり、お隣の香港にも店がある

 中国の双皮奶は、清朝末期(1900年代初め頃)、現在の広東省佛山市順徳区というところで、農民が朝食を作っていた際に誤って水牛の乳をひっくり返してしまったことから偶然にできたものだそうで、以来、人々に親しまれているという。

 そのため、発祥の地である順徳では今でも水牛の乳で双皮奶は作られているが、マカオやそれ以外の地域では普通の牛乳で作られている。水牛の乳で作ったほうが味が濃厚で、牛乳で作ったものはあっさり滑らかな味わいだそうだが、残念ながら筆者は順徳のものは食べたことがない。

 双皮奶の材料と作り方はとても単純。材料は牛乳と卵白、砂糖のみ。容器に牛乳を入れて蒸し、牛乳の表面に薄皮ができたら容器を蒸し器から出し、容器に薄皮だけを残してその下の牛乳は外に出す。出した牛乳に撹拌した卵白と砂糖を加え、再び容器の中にそっと注ぎ入れて残っていた薄皮を浮かせ、もう一度蒸して固める。以上。

 文字にすると簡単そうに思えるが、実際には凝固剤を使わずに表面がスムーズで滑らかな口当たりのものを作るにはかなりの経験とコツが必要だそう。

 二度目に蒸した時にも薄皮ができ、最初の薄皮と合わせて二つの薄皮ができることから、二つの皮のミルク、つまり「双皮奶」と呼ばれているわけである。

義順牛奶公司のミルクプリンの名前は「馳名雙皮燉奶」(32パタカ=約450円 パタカはマカオの通貨単位)。温かいものと冷たいものがある。ちなみに、筆者が初めて食べた9年前はこの半分の値段だった

 義順牛奶公司の双皮奶は、くどすぎないほのかな甘味と、口の中でとろけるような口当たりが特徴。多くの観光客が店に訪れ、観光のひと休みがてら本場の双皮奶を味わっていく。

 マカオのスイーツ2つのご紹介を終えたところで、深圳編もお終い。次回からは別の都市の美食をご紹介していく。
おまけカット。マカオはそこらじゅうにカジノがあるが、「カジノ・リスボア」はその中でも老舗中の老舗

佐久間賢三
中国在住9年5か月を経たのち、尻尾を巻いて日本に逃げ帰る。稼いだ金は稼いだ場所で使い果たすという家訓を忠実に守ったため(?)、ほぼ無一文で帰国。食い扶持を稼ぐためにあくせく働き、飲みに行く暇も金もない日々を送っている。日本の料理が世界で一番美味いと思っているが、中華の味も懐かしく感じる今日この頃。