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中国美味紀行その62(武漢編1)「武漢庶民の生活になくてはならない朝ご飯──熱乾麺」

 前回で終わった深圳編に続き、今回から4回にわたり、湖北省の省都・武漢市の美食をご紹介していく。とはいえ、湖北省には有名な料理があまりない。そこで、筆者が武漢で食べた小吃のいくつかを取り上げていく。

あまり特徴のない湖北料理の中で、唯一よく知られた食べ物

 武漢市のある湖北省は中国中部にあり、北にある北京と天津、南の広東省、東の上海、西の重慶・成都を結ぶ十字路のちょうど中間地点で、交通や流通の要衝である。また歴史的には、西暦3世紀ごろの三国志の時代に劉備が戦いを逃れて一時的に身を寄せた荊州や、赤壁の戦いが行なわれた場所があることでも知られている。

 その省都である武漢市の中心部には長江(揚子江)が流れ、南側から中心部に入ると、うねるようにして東へと抜けていく。武漢市はもともと、この長江とその支流である漢水を境にして武昌・漢陽・漢口の3つの地域に分かれていたのだが、1926年に合併され、それぞれの地域の漢字を取って武漢市となった(その後、一時的にまた分割されたりもした)。

武漢の中心部を貫くように流れる長江(揚子江)。この先、上海まで続いている

 その武漢で食べられている湖北料理の特徴はというと……、実はよく分からない。交通の要衝だけあって、周辺地域の料理の影響も受けているらしく、これといった特徴というものがない。そのため、中国のその他の都市に、湖北料理店などというものはごく少数しかない。また内陸部であるため、魚料理には淡水魚が使われている。

 そんな武漢で最も有名な食べ物といえば、熱乾麺(ラーガンミエン)を置いて他にはない(と思う)。

 茹でた小麦麺を油で和えて冷まし、そこに芝麻醤(チーマージァン)を加え、それに漬物や刻んだネギなどを載せて出来上がり。それがこれである。

熱干麺(1杯5元=約85円前後)

 芝麻醤はゴマでできたタレで、日本でいえばしゃぶしゃぶのゴマだれのようなもの。これをよく混ぜ混ぜしてからいただく。熱乾麺は武漢の人たちにとってなくてはならない食べ物で、一般的には朝食として食べられており、町中のいたるところに熱乾麺を売る店がある。

 武漢といえば熱乾麺ということで、筆者も期待して食べた。しかし……味にこれといった特徴がなく、なんかぼやけた印象で、正直いって期待ほどではなかった。有名店といわれる店でも食べてみたが、やはりそれほどでもなかった。ただ、この熱乾麺は地元の人たちには愛されている食べ物なので、食べ慣れれば美味く感じるようになるのかもしれない。

 武漢では出だしから期待はずれな味だったが、美味いものは他にあった。次回以降はそれらの小吃をご紹介していく。
おまけカット。長江にかかる武漢長江大橋。全長は1670mで2層式となっており、上が車道で、下側は鉄道の線路が走っている。つい先日の10月15日、開通60周年を迎えた

佐久間賢三
中国在住9年5か月を経たのち、尻尾を巻いて日本に逃げ帰る。稼いだ金は稼いだ場所で使い果たすという家訓を忠実に守ったため(?)、ほぼ無一文で帰国。食い扶持を稼ぐためにあくせく働き、飲みに行く暇も金もない日々を送っている。日本の料理が世界で一番美味いと思っているが、中華の味も懐かしく感じる今日この頃。