中国美味紀行その64(武漢編3)「街中で見つけた小さな美食──鍋塊」
- 2017/11/18 00:00
- 佐久間賢三
今回も、武漢の街中をブラブラと歩いている時に見つけた小吃をご紹介する。場所は、武漢北西部一帯の漢口の中心部にある下町エリアの商店街である。そこにも、これまで食べたことのなかった、意外に美味しい小吃があった。
庶民的なエリアでしか食べられない小吃
古い住居が並ぶコチャコチャした細い路地を入っていくと、そこは古い商店街だった。小さな店が道の両脇に並び、道を歩いている人も多い。気取ったところのない庶民的な街。悪い言い方をすれば、発展から取り残された貧しいエリアである。
その商店街の店の軒先で見かけたのが、これである。
ドーナツほどの大きさで、見た目はパイのよう。美味しそうなので買って食べてみたところ、生地はサクサクで中に肉餡が少しだけ入っていて、1個たった2元とは思えない美味さ。
「鍋塊」をネットで調べたところ、前回ご紹介した「公安鍋盔」と同じく、武漢の西隣にある仙桃市が発祥の小吃で、湖北省の方言では「鍋盔」とも言うらしい。ちなみに仙桃市の鍋塊にも公安鍋盔とほぼ同じようなものもあるようで、小麦粉の生地の中に少しの肉餡などを入れて焼いたものを総じて鍋塊または鍋盔というようである。
前回ご紹介した「鍋盔」は鉄釜の内側に生地を貼り付けて一つずつ焼いていたが、この「鍋塊」のほうは、オーブンのようなものでまとめて焼いているようだ。
小腹が満ちたところで再びブラブラと歩きだしたのだが、すぐにまた見つけたのがこの小吃である。
中国の朝ご飯としてよく食べられている「油条」(ヨウ ティアオ)に見た目はちょっと似ているが、まったく違う食べ物である。外側はサクサクで、中はモチモチ。ほんのりとした甘さがおやつにちょうどいい。
こんなふうに路上で見つけた小吃を食べるのも、中国の街歩きの楽しみの一つである。
ただ、このエリアは街の中心部にあり、周りには高層マンションが建ち並んでいることから、近い将来ここも再開発の波に押され、取り壊されてなくなってしまうのかもしれない。せめて一部だけでもいいから、こういった古いエリアを残しておいてほしいものである。
佐久間賢三
中国在住9年5か月を経たのち、尻尾を巻いて日本に逃げ帰る。稼いだ金は稼いだ場所で使い果たすという家訓を忠実に守ったため(?)、ほぼ無一文で帰国。食い扶持を稼ぐためにあくせく働き、飲みに行く暇も金もない日々を送っている。日本の料理が世界で一番美味いと思っているが、中華の味も懐かしく感じる今日この頃。