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中国美味紀行その65(武漢編4)「武漢で一番美味かった小吃──三鮮豆皮」

 武漢には正味3日間しかいなかったので、それほどいろいろなものを食べることができず、4回目の今回が武漢編の最終回。武漢で食べたものの中で一番美味かった小吃である三鮮豆皮をご紹介しよう。

武漢の人たちにとって、なくてはならない朝食の一つ

 長江にかかる長い橋のたもと近くに、戸部巷(フー ブー シァン)と呼ばれる路地がある。明や清の時代にはお役所が集まっていたという歴史ある場所なのだが、ここは現在、小吃を売る店舗やレストランが並ぶ美食街になっている。

150mほどの長さの路地に食べ物の屋台が並ぶ戸部巷

 武漢の小吃だけではなく、他の地方の食べ物もあり、武漢の観光名所にもなっているようで、平日の昼間でも多くの人が店頭に並ぶ小吃を眺めながらそぞろ歩いている。道の両脇に並んだ料理を見ると、どれも美味しそうに見える。

目の前で湯気を立てている小吃を見ると、思わず食べたくなる

 そこで食べたのが、武漢の名物小吃の一つ、三鮮豆皮(サン シエン ドウ ピー)である。実は三鮮豆皮を食べるのはこれが初めてではなく、その前年に四川省の成都に住んでいた時、春節(旧正月)のお祭りの屋台で食べたことがあった。その時に食べた三鮮豆皮が美味かったので、本場の武漢でぜひ食べたいと思っていたのだ。

三鮮豆皮。5元(約85円)ていど。実は武漢にいる間に2回食べた

 見た目はちょっとだけオープンオムライスに似ている。どのような味だったか、今はもうはっきりとは覚えていないのだが、意外に薄味のあっさりとしたもので、いくつでも食べられそうなほど美味かったのだけは覚えている。

 三鮮豆皮は、かつては祭日などの時に特別に食べるものだったらしが、以前にご紹介した熱干麺と同様、今では武漢の人たちにとってなくてはならない朝食の一つとなっている。

 材料は、皮の部分は緑豆をすりつぶしてペースト状にしたものと、米を砕いて作ったライスミルク、もち米、卵、そして肉やエビ、キノコ、タケノコなどである。これらの材料を使い、パラボラアンテナのような大きな鉄鍋で作る。

出来上がったばかりの三鮮豆皮。鉄鍋の下の火は常についているので、やはり出来たてをいただきたい

 緑豆のペーストとライスミルクを混ぜ合わせたものを熱した鉄鍋の上に入れ、クレープのように薄く広げていく。その生地の上に溶いた卵を入れて薄く伸ばす。その上に薄く味付けしたもち米を乗せて、生地の上にまんべんなく広げていく。さらにその上に肉やエビ、キノコ、タケノコなどの具をまぶしていく。

 準備ができたら、この大きな鉄鍋の両側を持ち、ホットケーキを裏返す要領でエイヤッ!とひっくり返したら出来上がり。かなり大きいだけに、熟練の技が必要だろう。うまくひっくり返せなかったら悲惨だ。おそらく商品として売れないと思われる。うまくひっくり返したら四角く切って刻んだ青ネギを散らし、注文が入るごとにフライ返しのような道具で容器に入れていく。

 中国では一般的に朝ご飯で普通のご飯を食べることはほとんどなく、肉まんや油条(中華風揚げパン)、お粥、麺類などが食べられているが、なぜかもち米で作られた小吃はよく食べられている。

 この三鮮豆皮は、もし再び武漢に行くことがあったら、何はなくとも必ず食べたいと思っているほど気に入っている小吃である。
おまけカット。中国の大学の中でも1、2位を争う美しさを持つ武漢大学のキャンパス。後ろの山もキャンパス内

佐久間賢三
中国在住9年5か月を経たのち、尻尾を巻いて日本に逃げ帰る。稼いだ金は稼いだ場所で使い果たすという家訓を忠実に守ったため(?)、ほぼ無一文で帰国。食い扶持を稼ぐためにあくせく働き、飲みに行く暇も金もない日々を送っている。日本の料理が世界で一番美味いと思っているが、中華の味も懐かしく感じる今日この頃。