SecurityInsight | セキュリティインサイト

中国美味紀行その70(日本編4)「香辛料たっぷりでビールが進む──羊肉串」

 池袋駅北口エリアには、中国東北地方の料理を出すレストランが比較的多い。日本人にはあまり馴染みのない中国東北料理の中から、今回はビールにもよく合う羊肉串(ヤン ロウ チュアン)をご紹介しよう。

 池袋駅北口エリアに東北料理の店が多いのは、1990年代後半以降、東北3省(黒竜江省、吉林省、遼寧省)から多くの留学生が日本にやって来て、この辺りに住み始めたことが大きな要因になっているという(『池袋チャイナタウン』洋泉社 山下清海著より)。

 東北料理といってまず思い浮かぶのは餃子(焼き餃子ではなく茹で餃子)だが、羊肉を串に刺して焼いた羊肉串もよく知られている。ただ羊肉串の場合、東北だけでなく中国各地でよく食べられており、特に中国最西部にある新疆ウイグル自治区のものが有名なので、東北だけの名物というわけではない。

串が自動で回転するから焼くのもラクラク

 中国から一時帰国してきた知り合いと池袋で飲もうとなった時に、先方から指定されたのが、池袋駅西口または北口から徒歩5分ほどのところにある延辺料理の店だった。

 延辺料理というのは吉林省内にある延辺(イェンビェン)朝鮮族自治区の料理のこと。地名からも分かるとおり、北朝鮮との国境沿いにある、朝鮮族の人が多い地域である。

 その店で出てきた羊肉串がこちらである。

肉にさまざまな香辛料が振りかけられて出てくる

 中国居住経験者3人が集まれば、頼み方も豪快である(とはいえ、おそらく中国東北人には負ける)。日本の焼き鳥の2倍はボリュームがある羊肉串やナンコツ串などを10本単位でオーダーしていく。

 日本の焼き鳥と違うのは、串をテーブルの炭火コンロで自分で焼くところ。日本の焼き肉のようなものである。そして、この店のコンロがこちらである。

他の料理をつつきながら、肉が焼けるのを待つ

 この写真だとその特徴が分かりにくいので、重要な部分をアップしたのが右の写真。串の柄の部分に小さな歯車が付いており、それをコンロの縁に並ぶ穴にはめ込む。この穴の空いた部分が自動で左右に動く仕組みになっており、その動きを歯車が捉え、串がクルクルと回転していく。つまり、自動的に肉が炭の上で回転していくので、いちいち手で串を回さなくても、ムラなく焼けるというスグレモノなのである。

 ほどよく油が落ち、肉がこんがり焼けたら、そのまま噛りついてもいいが、お好みでさらに香辛料を付けて食べるのもまたよし。羊肉というと日本では匂いが気になる人も多いが、この羊肉串は香辛料たっぷりなので、臭みを感じることはほとんどない。もうビールが進むこと進むこと。

付け合せの香辛料は、クミンやウコン(おそらく)、唐辛子など

 ただ、食べている時には感じなかった臭みが、帰りの電車の中での自分の服や、翌日のゲップから強烈に臭ってきたりするのが玉に瑕ではある。
 

佐久間賢三
中国在住9年5か月を経たのち、尻尾を巻いて日本に逃げ帰る。稼いだ金は稼いだ場所で使い果たすという家訓を忠実に守ったため(?)、ほぼ無一文で帰国。食い扶持を稼ぐためにあくせく働き、飲みに行く暇も金もない日々を送っている。日本の料理が世界で一番美味いと思っているが、中華の味も懐かしく感じる今日この頃。