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中国美味紀行その75(日本編9)「上野アメ横で食べる中国本場の味──油条と豆乳」

 今回は池袋駅北口から離れて、上野アメ横である。昔はアメ横といえば年末に正月用の食品を買い求める客でごった返す場所というイメージしかなかったが、今ではすっかり様変わりして、外国人観光客が大挙して訪れる場所となっている。そんなアメ横で食べたのが、中国の朝ご飯の定番、油条と豆乳である。

中国と変わらない油条が食べられる

 アメ横の通りを上野駅側から入っていって、チョコレートの叩き売りのおじさんの声を通り過ぎてしばらくすると、三角地帯に建つアメ横センタービルがある。ここの地下には中国や東南アジアの食品を売る店が並んでおり、狭い通路をぶつかり合いながら歩く客のほとんどがそれらの国から来た人たち。もはや日本とはいえないような雰囲気を出している。

 しかし、今回の主題はそこではない。今回の主題は、そのアメ横センタービルの1階およびその対面にある店である。

 上野駅側から歩いていくと、アメ横センタービルの1階には魚屋があるが、さらにその先は小規模の屋台街のようになっていて、ケバブの店や中国料理の店が軒を連ねている。いつの間にこんなことになっていたのだろうか。

行ったのは2月の初め。平日の小雨模様の夕方だったので人が少なかったが、週末ともなれば人でごった返し、屋台で席を取るのも一苦労である

 まあそれはともかく、今回ここに来たのは、この屋台の店で油条を食べるためである。池袋駅北口で知り合った中国人の女性から、ここでは中国と変わらない油条が食べられると聞き、中国の味を求めて訪れたのだった。

 油条(ヨウ ティァオ)とは、いわば中国風揚げパンのこと。油できつね色に揚げられており、中はスカスカのフカフカ。特に味はついておらず、中国では朝食としてお粥や豆乳と一緒に食べることが多い。

 アメ横センタービルの脇には中国系の屋台がいくつもあり、どれに入るか迷ったが、看板に油条の写真があった屋台で食べることにした。

 店員さんは当然のごとく中国人である。客も、見たところは(というか話している言葉を聞くところでは)、ほとんどが中国人。しかも観光客っぽい。なんで日本に来てまで……という話は今回の本題ではないので置いておいて、とにかく油条を頼むことにする。

 そこで出てきた油条がこれである。

油条は1本200円、豆乳(豆漿)は1杯100円とお値打ち価格。油条はお粥と一緒に食べても美味い

 1本と頼んだのに2本出てきたのでワケを尋ねると、これで1本分なのだという。そう言われてよく考えてみれば、中国の油条は2本の細い生地を1本にして揚げてあることも多い。つまりこの店では、2本を一緒にせず別々に揚げているということなのだろう。

 食べてみると、ほぼ揚げたてで、期待していた以上の味だった。しかし、いかんせん1本が太すぎる。中国のものよりずっと太い。頼んだ豆乳1杯だけでは1本しか食べ終えることできなかった。

 残り1本はお持ち帰りにしようかとも考えたが、油条は時間がたつとフニャフニャになって油っこくなり、美味くない。家に持ち帰っても食べることはないだろうと考え、この場で食べてしまうことにした。

 そこで頼んだのが豆乳スープである。

豆乳スープ(咸豆漿)のほうは1杯200円

 普通の豆乳は少し甘みがついているのに対し、こちらは塩味のスープである。これに油条を浸して食べるのもまた美味い。これなら最初から豆乳スープにしておけばよかった。

 なんとか食べ終えた時にはお腹いっぱい。本当はこの後、別の屋台で他のものを食べようと思っていたのだが、もう入りそうになかった。

 上にも書いたとおり、ここにある中国系の屋台は中国人客が多いからか、味も中国人向けになっているようだ。他にもたくさん料理があるので、もしかしたらかなり本場の味に近いかもしれない。

 というわけで、今回は一人で行ったが、次は友人らと一緒に行って、いくつか他の料理も試してみたいと思っている。
 

佐久間賢三
中国在住9年5か月を経たのち、尻尾を巻いて日本に逃げ帰る。稼いだ金は稼いだ場所で使い果たすという家訓を忠実に守ったため(?)、ほぼ無一文で帰国。食い扶持を稼ぐためにあくせく働き、飲みに行く暇も金もない日々を送っている。日本の料理が世界で一番美味いと思っているが、中華の味も懐かしく感じる今日この頃。