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中国美味紀行その81(日本編15)「香港茶餐廳メシ編その1 茶餐廳の定番中の定番──鴛鴦茶&パイナップルパン

 香港には「茶餐廳」(広東語読み:チャーチャーンテン)と呼ばれる喫茶店兼食堂があり、香港庶民たちの胃袋を満たす場所として長年親しまれている。今回から数回にわたり、東京でも食べられる茶餐廳メニューをいくつかご紹介していく。

3つの味が一緒になってワケの分からない味に

 最近は東京にも茶餐廳スタイルの食堂がいくつかできている。経営者はおそらく香港人ではないかと思われるが、そこでは広東料理とはまた違った“茶餐廳メシ”を食べることができる。1回目の今回は、茶餐廳の定番中の定番ともいえるものを取り上げよう。それがこちら、鴛鴦茶(ユンヨンチャー)である。

鴛鴦茶は鴛鴦奶茶(ユンヨンナーイチャー)とも呼ばれている。奶茶はミルクティーという意味

 鴛鴦は「おしどり」のことだが、おしどり茶と言われてもなんだか分からない。鴛鴦茶はコーヒーと紅茶を混ぜた飲み物なのである。しかも紅茶は無糖練乳を混ぜたミルクティーである。日本語にも「おしどり夫婦」という言葉があるように、おしどりは雄雌いつも一緒にいることから、コーヒーと紅茶を混ぜたこの不思議な飲み物に「鴛鴦茶」という名前を付けたようだ。

 話は横に逸れるが、香港には他にも不思議な飲み物があり、その代表的なものが「ホットコーラ」。文字どおり温めたコーラで、レモンと生姜が入っていて、香港では風邪を引いた時に飲むものとなっている。

 で、鴛鴦茶のお味のほうであるが、濃く煮出した紅茶と無糖練乳、そしてコーヒーが一緒くたとなって、ワケの分からない味になっている。本場の香港では、紅茶が多めとか、コーヒーが多めとか、半々とか、店によって割合が違い、飲む人によって好みが分かれるという。筆者的には、コーヒーは隠し味的に少なめの量がいいと思う。というか、こう言っては元も子もないが、コーヒーを混ぜずに香港式ミルクティーのまま飲んだほうが絶対に美味いと思う。

 そして、アフタヌーンティーとして鴛鴦茶やミルクティーに欠かせないのが、パイナップルパンにバターを挟んだ菠蘿油(ボーローヤウ)だ。

菠蘿はパイナップルのことで、パイナップルパンは菠蘿包(ボーローバーウ)。それにバター(黄油)を挟んだものが菠蘿油と呼ばれている

 パイナップルパンは日本のメロンパンのようなもので、メロンパンにメロンが入っていないように、香港のパイナップルパンにもパイナップルは入っていない。表面の格子状の模様がパイナップルに似ているからそう呼ばれているようだ。

 このまま食べても美味しいが、温めてから切れ目を入れてバターを挟み、バターを柔らかくして食べるのが茶餐廳的ないただき方。食べていると表面がボロボロと落ちてくることもあるので、気をつけて食べる必要がある。ただ、やはり日本で作られているパイナップルパンは本場のものとは違い、それほど美味しくなかった。それならこれをメロンパンでやってみたらどうだろうか。いつか試してみたい。
 

佐久間賢三
中国在住9年5か月を経たのち、尻尾を巻いて日本に逃げ帰る。稼いだ金は稼いだ場所で使い果たすという家訓を忠実に守ったため(?)、ほぼ無一文で帰国。食い扶持を稼ぐためにあくせく働き、飲みに行く暇も金もない日々を送っている。日本の料理が世界で一番美味いと思っているが、中華の味も懐かしく感じる今日この頃。