中国美味紀行その83(日本編17)「香港茶餐廳メシ編その3 名前はビックリだが、朝食や飲茶の定番──腸粉」
- 2018/09/01 00:00
- 佐久間賢三
「腸粉」。日本人の感覚からすると、干した腸を粉にした漢方薬のようなものを想像してしまうが、さにあらず。液状にした米を蒸して湯葉状にした食べ物である。香港では茶餐廳で食べるものというよりも朝食や飲茶の点心というイメージがあるが、日本にある茶餐廳ではメニューに入っているところが多い。
ツルツルとした口当たりがたまらない
腸粉(標準中国語読み:チャン フェン、広東語読み:チョン ファン)は、米粉と水を合わせて乳液状にしたものを平らなバットや布の上に薄く敷き、それを蒸して作る。蒸しあがったものをヘラのようなもので丸めたら出来上がり。腸粉は別名「猪腸粉」(猪はブタの意味)ともいい、その形がブタの腸に似ていることから、そう呼ばれるようになったらしい。
米粉に味はついていないので、中にひき肉や干しエビなどの具を入れて、XO醤などのタレをかけていただく。それがこれである。
米粉でできた皮の部分がツルツルしていて、滑らかな口当たりが心地よい。香港の隣にある深圳でも腸粉は朝食や飲茶の点心としてよく食べられていて、筆者がときおり朝食でテイクアウトしていたのがこれである。
中に肉などは入っておらず、卵を溶いて米粉と一緒に蒸したものと青菜が少し入っているだけだが、薄味のタレがお腹に優しく、これはこれで美味い。
一方の飲茶の点心となると、もう少し高級感があり、形もきれいにして出してくる。
飲茶も一般的には午前中にするものなので、腸粉はやはり朝食の定番といえるだろう。ただ、お腹に優しくて美味しいのだが、腹持ちが悪く、これだけではすぐにお腹がすいてくるのが欠点である。
佐久間賢三
中国在住9年5か月を経たのち、尻尾を巻いて日本に逃げ帰る。稼いだ金は稼いだ場所で使い果たすという家訓を忠実に守ったため(?)、ほぼ無一文で帰国。食い扶持を稼ぐためにあくせく働き、飲みに行く暇も金もない日々を送っている。日本の料理が世界で一番美味いと思っているが、中華の味も懐かしく感じる今日この頃。