中国美味紀行その87「台湾特別編(その1) 果物のタネを使った自然のゼリー──愛玉子」
- 2018/11/03 00:00
- 佐久間賢三
台湾にはさまざまな美味いものがあるが、今回の台湾食い倒れツアーで最初に食べたのが、台湾特有のデザート「愛玉子」である。「愛の玉子」という意味ではない。台湾語では「オーギョーチ」と読むらしく、ゼリーのような食べ物である。
話を聞いても、作り方はよく分からなかったのだが……
台北に着き、ホテルに荷物を置いて街中に出た。まずはホテル近くにある城隍廟(チェン フアン ミァオ)という、台湾ならたいていの町に必ずある、町の守り神を祀る廟で旅の挨拶と旅中の無事を願ってお参りした。
城隍廟のすぐ近くに小さな露天市場があり、小腹が空いていたので何を食べようかとブラブラして見つけたのが、台湾スイーツの屋台。さっそく座って食べることにした。
同行者の一人がガイドブックか何かで見たのか「アイタマが食べたい」ということで頼んだのが、こちらの「愛玉子」である。
これは愛玉子という名の、台湾北部の山間地に自生する果物のタネから作るのだという。まあこれはネットで後から調べて知ったことで、その時はもちろんそんなことは知らない。
そこで、隣に座って愛玉子を食べていたおじさんにどうやって作るのか聞いてみたところ、手のひらを合わせてこするような仕草をする。どうやら、写真の奥に見える固まりのツブツブを手のひらに入れて、それを水の中でこするらしい。
だが、どうしてそれでこんなゼリーができるのか、さっぱり分からない。結局、要領が得られないままだったが、愛玉子は柔らかめのゼリーのような食感と、甘くしたレモン汁の酸味が合わさり、とにかく美味い。ゼリーにはほとんど味がなく、この汁が味の決め手になるようだ。
後に調べたところ、この愛玉子は、このタネを水の中で揉むとタネからペクチンというものが溶け出して、それが固まってゼリーになるらしい。
筆者が頼んだのが檸檬仙草(ニン モン シエン ツァオ)で、こちらも台湾独特のデザートである。
こちらは仙草という植物の葉や茎を煮詰めて冷やすと、こんなふうに黒いゼリーができあがるらしい。やや苦味があり、愛玉子と同じように甘酸っぱいレモン汁でいただく。やや漢方っぽい感じがして、食べているうちに体の中の火照った熱を冷ましてくれる感じがするから不思議だ。
同行者は愛玉子がいたく気に入り、4日間の滞在で3回も食べていた。ちなみにこの店では最終日にもう1回食べた。さらには、迪化街(ディー フア ジエ)という問屋街に行ったら(日本人観光客が多かった)、この愛玉子を作る素となるタネが観光客向けに売られていて、それまで購入して日本に持って帰ってきていた。
台湾にはこういった自然食品を使ったスイーツが数多くある。なんだか羨ましい気がしてきた。
佐久間賢三
中国在住9年5か月を経たのち、尻尾を巻いて日本に逃げ帰る。稼いだ金は稼いだ場所で使い果たすという家訓を忠実に守ったため(?)、ほぼ無一文で帰国。食い扶持を稼ぐためにあくせく働き、飲みに行く暇も金もない日々を送っている。日本の料理が世界で一番美味いと思っているが、中華の味も懐かしく感じる今日この頃。