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中国美味紀行その88「台湾特別編(その2) 夜市で人気の有名店は、支店でもホントに行列していた──胡椒餅」

 台北市内には夜市がいくつかあるが、そのうちの一つ、観光客が多く訪れる饒河街(ラオハージエ)観光夜市に、いつでも長い行列ができる屋台がある。その屋台の名は福州世祖胡椒餅といい、台湾名物の一つ、胡椒餅(フージァオビン)を売っている。今回はその夜市には行く予定がなかったのだが、幸いなことに、宿泊したホテルの近くに支店があった。

肉餡とネギをこれでもかというほど入れて包む

 胡椒餅は、豚肉とネギ、胡椒、調味料を混ぜた餡を、小麦粉で作った生地で包んで、釜で焼き上げたもの。簡単な言い方をすれば、釜で焼いた肉まんである。

 ネットで「胡椒餅」で検索すると、必ず出てくるのが福州世祖胡椒餅。ミシュランガイドの台北版で、ビブグルマン(星の評価からは外れているものの、安くて美味しい店のリスト)に掲載された夜市の屋台10店のうちの一つに選ばれていた。

 同行者たちとホテル近くのあたりをブラブラと歩いていると、店の前に行列ができている店が。そこが福州世祖胡椒餅だった。平日の午後であるにもかかわらず、観光客に混じって地元の人らしき人たちも多く並んでいる。行列するほど人気というのは本当だった。

 店頭で作っているので、列に並んでいると、店員の人たちの作業を見ることができる。鍋に盛られた肉餡と、大きなザルに入った刻みネギ、そして小さく丸まった生地。それらを二人の男性が手早く丸めて作っていく。

生地を作る人、包む人、焼く人が分担作業で大量の胡椒餅を作っていく

 丸まった生地を手のひらに広げると、肉餡とネギをこれでもかというくらい乗せる。さすがに包みきれずに生地からはみ出てしまうんじゃないかというくらいの量。ところが、二人とも箸を使って生地の中に餡を押し込んでいき、いとも簡単にうまく丸めてしまった。

 それを今度は、鉄釜の内側に貼り付けて焼いていく。釜はインド料理のナンを焼くような壺型になっている。

釜の内側に貼り付けられた胡椒餅。貼り付けるところは見なかったが、熱くないのだろうか

 直接火に当てて焼くわけではないので、焼き上がるまでに時間がかかる。地元の人たちは、多い人では10個単位で買っていく。そんなわけで、どうしても行列ができるわけである。

 しかし、目の前で作っている様子を見ていると飽きることがなく、それでうまい具合に時間つぶしができる。店頭で作って外から見えるようにしているのは、そういった理由なのかもしれない。出来上がった胡椒餅は、小さな紙袋に入れて出してくれる。

胡椒餅、1個170円くらい。あまりにも熱くて二つに割って撮影することができなかった

 出来上がった胡椒餅はアツアツ。受け取ってもすぐに食べることができない。口をハフハフさせながら食べる胡椒餅のお味は、もちろん美味しい。だが、その場でちょっと慌ただしく食べたこともあって、まあこんなもんかなといった感じだった。次に台湾に行く機会があったら、その時はもっとゆっくりと味わって食べてみたい。
問屋街の迪化街(ディー フア ジエ)。台北中心部の歩道は、騎楼(チーロウ)という、建物の1階部分が歩道になっている建築様式になっている

佐久間賢三
中国在住9年5か月を経たのち、尻尾を巻いて日本に逃げ帰る。稼いだ金は稼いだ場所で使い果たすという家訓を忠実に守ったため(?)、ほぼ無一文で帰国。食い扶持を稼ぐためにあくせく働き、飲みに行く暇も金もない日々を送っている。日本の料理が世界で一番美味いと思っているが、中華の味も懐かしく感じる今日この頃。