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中国美味紀行その90「台湾特別編(その4) 朝食の定番・豆乳スープ──鹹豆漿」

 今回の台湾旅行で、楽しみにしていた食べ物の一つ。それが豆乳でできたスープの鹹豆漿(シエン ドウ ジァン)である。豆乳というと甘く味付けしたものが日本では一般的だが、鹹豆漿は塩味で、台湾では朝食の定番の一つとなっている。

かきまぜたブルガリアヨーグルトのような食感

 台北駅の南側に広がる古いビル街。歩道に面した店舗のなかには、朝から食事を提供する食堂がいくつもある。台湾2日目の朝食は、その中の一つ、台北市内にいくつもある永和豆漿の系列店で食べることにした。店に行ってみると、朝から店舗の前には人だかりができ、朝食をテイクアウトしていく人や、中の食堂で食べていく人が並んでいた。

朝とそれ以外の時間帯では出す食べ物が異なり、早點(ザオ ディエン)が朝食メニュー

 ここで頼んだのが、鹹豆漿と中華風揚げパンの油条(ヨウ ティアオ 台湾の表記では油條)、蒸籠に入った小籠包(シァオ ロン バオ)である。鹹豆漿はスープなので温かく、ネギや油条を刻んだものが浮かんでいる。

鹹豆漿は大きな丼に入って出てくる。鹹豆漿は28元(約105円)、油条が16元(約60円)

 まずは鹹豆漿を一口食べる。柔らかく濃厚な豆乳にやや塩気のある味わいで、五臓六腑にしみわたる。豆乳といっても、豆腐になる二歩手前くらいの感じで、かきまぜたブルガリアヨーグルトのような食感になっている。これに油条を浸して食べると、朝から幸せな気分に浸ることができる。

 筆者が上海に住んでいた時も、豆乳スープが好きでときおり食べていたが、上海のものはもっとさらっとしていた。

 もう一つ食べたのが小籠包。台湾には小籠包で有名な高級レストランチェーン・鼎泰豐があり、そちらではスープたっぷりの本格的なものが味わえるが、下町の食堂で食べる小籠包は、小さな肉まんといった感じである。

小籠包は1蒸籠60元(230円)。ハーフサイズもある

 これだけ食べれば、もう朝からお腹いっぱい。同行者の3人はこの豆乳スープと油条の朝食がいたく気に入り、台湾最後の朝も、同じ店に行って同じものを食べたほどである。その際に話したのが、これをいかに日本で再現するか。油条は冷凍ものが売られているので簡単だが、この豆乳スープのドロドロ具合を再現するのは、なかなか難しそうである。
台北から電車を乗り継いで1時間弱のところにある観光地・十分(シーフェン)。線路の上から願い事を書いたランタン(天燈)を空に飛ばすことができる

佐久間賢三
中国在住9年5か月を経たのち、尻尾を巻いて日本に逃げ帰る。稼いだ金は稼いだ場所で使い果たすという家訓を忠実に守ったため(?)、ほぼ無一文で帰国。食い扶持を稼ぐためにあくせく働き、飲みに行く暇も金もない日々を送っている。日本の料理が世界で一番美味いと思っているが、中華の味も懐かしく感じる今日この頃。