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中国美味紀行その92「台湾特別編(その6) 朝食は炭水化物祭り──もち米おにぎり・お粥・麺線」

 台湾旅行3日目の朝食も、もちろん外の食堂で。同行者たちは朝食が出るホテルに泊まっていたが、朝食を外で食べるためにわざわざ出てきた。今回入った店の決め手は、出勤前に朝食を買い求める人たちが店の前にたくさんいたこと。地元の人たちに人気のある店がハズレのわけがない。

朝食は炭水化物系の食べ物がほとんど

 店頭のメニューを見てあれこれ悩みながら、前日とはまた違う、台湾らしい朝食を選んだ。それがこれである。

上から時計回りに麺線、香菇鶏肉粥、飯糰

 中華圏の人たちは、朝食に米を食べることはあまりない。麺類や包子(バオズ=肉まん類)、饅頭(マントウ=蒸しパン)、そして前々回ご紹介した油条に豆乳といった簡単なものが多い。いずれにしても、炭水化物系の食べ物がほとんどである。

 そのなかで、米を使っている数少ない朝食の一つがお粥である。この店では中に入っている具によって種類がいろいろあり、今回は香菇鶏肉粥(シァングー ジーロウ ヂョウ)、シイタケと鶏肉のお粥を選んだ。お粥の上には青ネギ少々とピーナツ、そして刻んだ油条が浮かんでいる。

 あっさりとしたお粥にシイタケと鶏肉の味が染み込んでおり、一口食べるたびに、朝起きたばかりの胃が癒やされるように温まっていく。ちなみに中国語では、お粥を食べる動詞は「吃」(食べる)ではなく、「喝」(飲む)である。

 もう一つの朝食が麺線(ミエン シエン)。これは台湾名物の一つで、出汁の利いたとろみのあるスープの中に、素麺のような細い麺がたっぷりと入っている。そして上に乗っかっている具はホルモンである。麺線は朝食としてだけではなく、小腹が空いた時のおやつや夜食としてもよく食べられている。

 この店の麺線は濃いめのカツオ出汁で、日本人にはピッタリの味。ホルモンの甘みと歯ごたえがアクセントとなり、延々と食べていられそうなほど美味い。これもまた熱々なので、お腹の中に染み入ってくる。

 そしてもう一つが飯糰(ファン トゥアン)、中華風の“おにぎり”である。ついさっき「中華圏の人たちは、朝食に米を食べることはあまりない」と書いていたのに、これはお米じゃないか、と思った人もいるかと思うが、これはもち米である。横のどんぶりの大きさと比較すれと分かると思うが、日本のおにぎりの3倍くらいの大きさがある。

 こちらも中に入れる具を選ぶことができ、今回選んだのは培根(ペイ ゲン=ベーコン)と鶏蛋(ジー ダン)。それ以外に漬物や肉鬆(ロウ ソン=肉のでんぶ)、そして、中華風揚げパンの油条(ヨウ ティアオ)がまるまる1本、折り曲げられて入っている。

 朝からもち米など、お腹に重そうな感じがするが、意外にするすると食べられてしまう。中に入っている油条も、その油っぽさがもち米と中和されるのか、それほどしつこくない。これを一人で一つ食べたら、お昼までお腹が空くことはなさそうだ。

 この3つの朝食、同行者2人が女性だったので量が多すぎたかなと思ったが、結局、あまりの美味さにあっという間に平らげてしまった。台湾は朝から幸せになれるところである。
台北から電車を乗り継いで1時間半ほどのところにある十分(シー フェン)。ここでは、自分で願い事を書いたランタンを線路の上から空に飛ばすことができる。日本ではまだ九份ほど有名ではないが、内外の観光客で賑わう

佐久間賢三
中国在住9年5か月を経たのち、尻尾を巻いて日本に逃げ帰る。稼いだ金は稼いだ場所で使い果たすという家訓を忠実に守ったため(?)、ほぼ無一文で帰国。食い扶持を稼ぐためにあくせく働き、飲みに行く暇も金もない日々を送っている。日本の料理が世界で一番美味いと思っているが、中華の味も懐かしく感じる今日この頃。