SecurityInsight | セキュリティインサイト

中国美味紀行その93「台湾特別編(その7) 何だか分からなかったけど、とりあえず食べてみた──碗粿&魚羹」

 台湾旅行3日目は、総勢6人で高速鉄道に乗って台南へ。現地では、台湾人の知り合いに小吃街(小吃の店が並ぶ通り)に連れていってもらい、台南の小吃を堪能した。とはいえ、最初に入った店で食べたのは、何だかよく分からないものだった。

店が出している料理は2種類のみ

 我々6人は台南駅からタクシーに分乗して小吃街に向かい、台湾人の知り合いは自ら運転してきた車で向かった。彼らが駐車場を見つけて戻ってくるのを待っている間、日本人6人は眼の前に広がる小吃街の賑わいに刺激され、とにかく何か食べようとなった。

 ところが、どの店も屋台に毛が生えた程度の規模で、しかもどこも客でいっぱい。6人が一緒に座れるようなテーブルが空いていなかった。と、店の奥のほうに空いているスペースを見つけた。何の店だか分からなかったが、とにかく入って先に席に座ることにした。それがこの店である。

店の歩道にも低めのテーブルと椅子が並んでいる

 写真に写っているところにはテーブルしかなく、写真左側にわずかに見えている店舗のほうでオーダーする。この店が出している食べ物は、看板を見ると分かるとおり、碗粿と魚羹の2つだけ。どちらも30元(約110円)。何を食べるか迷う必要すらない。

 とはいえ、碗粿と魚羹がどんな食べ物だかまったく分からない。周りのテーブルを見ると、みんな小さなお椀に入ったものを食べている。でも、やっぱり何だかよく分からない。迷っていてもしょうがないので、とにかく碗粿3つと魚羹3つをオーダーしてみることにした。

 碗粿のほうは中国語で「ワングォー」で、魚羹の魚は「ユー」と読むのは分かっていたが、羹の読み方が分からない。羊羹(ようかん)の羹と同じ字だから「カン」か「ガン」かなと適当に当たりをつけ、店の人に「ユーガン」と言ったら通じた。ただし、声調はいい加減である。それでも通じたのは、メニューがたった2つしかないからだろう。

 そして、ちょっと待って出てきたのがこちらである。

左が魚羹で右が碗粿。魚羹にはステンレス製のレンゲが、碗粿には木のヘラが付いてきた

 左側の魚羹はレンゲで食べればいいのは分かるが、碗粿のお椀に入っている木のヘラは何なのか。持ってきた店員の男の子にどうやって食べるのか聞いたところ、木のヘラで十字にケーキを切るような仕草をする。要は固まっているのを崩して食べろということらしい。

 まずは右の碗粿を食べる。茶碗蒸しのような食感で味も悪くないが、かといって「うーん、これは美味い」と唸るほどの味でもない。決して味をけなしているわけではなく、とにかく何だかよく分からない食べ物だった。

 そして左の魚羹である。魚の身が入ったスープであろうことは分かるが、なにせ「羹」(あつもの)である。「羹に懲りて膾を吹く」ということわざが頭に浮かび、ものすごく熱い食べ物なのではないかと想像してしまう。

 実際のところはそれほど熱くもなく、あっさりとした味でとろみのあるスープ。中に入っていたのは白身魚のつみれらしきものだった。

 あとからガイドブックとネットで調べたところ、碗粿のほうは豚肉やエビ、シイタケ、それにすり潰した米などを混ぜて蒸し上げた料理で、台南名物の小吃の一つだった。

 魚羹のほうは「虱目魚」(サバヒー)という魚の身のつみれが入ったスープで、碗粿とセットで食べるのが一般的なようだ。ちなみに「羹」の字を中国語辞書で調べたら、「濃いとろみのあるスープ」とあった。やっぱり「熱い食べ物」という意味ではなかった。

 我々が食べた店のちょうど対面に、台南で一番有名な碗粿と魚羹の店があったようだが、まあそれは気にしないでおこう。正直、味のほうはピンとこなかったが、偶然とはいえ最初から台南名物が食べられたということで、これで良しとすることにした。
 

佐久間賢三
中国在住9年5か月を経たのち、尻尾を巻いて日本に逃げ帰る。稼いだ金は稼いだ場所で使い果たすという家訓を忠実に守ったため(?)、ほぼ無一文で帰国。食い扶持を稼ぐためにあくせく働き、飲みに行く暇も金もない日々を送っている。日本の料理が世界で一番美味いと思っているが、中華の味も懐かしく感じる今日この頃。