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中国美味紀行その95「台湾特別編(その9)イカの風味たっぷりのスープビーフン──小巻米粉」

 台湾人の友人が車を駐車場に置いて戻ってきた。しばらく小吃街を歩いて最初に連れていってくれたのは、イカの風味たっぷりのスープに入ったビーフンの店だった。これまた台南名物のようである。

スープをすするとイカの風味が口いっぱいに

 小吃街の店はどうやら多くが専門店のようで、メニューがとてもシンプル。看板を見ると、その店の専門料理が2つ、3つ書かれているだけである。この店では、小巻米粉の太麺と細麺、麺の入っていないスープだけのもの、小巻の切り身、そして小巻の卵である。

店頭でオーダーしてお金を払ってから食べるシステム。小巻米粉は80元(約300円)

 ここに書かれている“小巻”とは小ぶりのイカのことのようで、小巻米粉はイカで取った出汁のスープにビーフンが入っている。太麺のほうがこちらである。

小ぶりのイカが“小巻”と呼ばれているのは、身が巻いたようになっているから?

 まずはレンゲでスープをすすると、イカの風味が口の中いっぱいに広がってくる。スープの色と同様、薄めであっさりした味わいだ。麺はビーフンだけあって、モチモチしていながらも腰は弱く、軽く噛むだけで食べていける。

 イカの身は備え付けのタレにつけても良し、何もつけずにイカの味そのものを楽しむのも良し。身はほどよい硬さで、噛むと小気味良く切れていく。数口食べただけで、口の中がすでにイカ祭り状態だ。

 普通だったら太麺か細麺のどちらか一つを食べるのだろうが、せっかく台南に来たのだから両方食べていけとばかりに、友人は細麺も頼んでくれていた。それがこちら。

この小吃街には、今回入った店以外にも小巻米粉の有名店がある

 スープは太麺と同じ(当たり前か)。麺のほうは日本のと同じようなタイプのビーフンで、スープが麺によくからんでくる。

 麺の太さがこれだけ違うと、同じスープでも味わいが大きく変わってくる。太麺と細麺、どちらも甲乙つけがたい。せっかく食べるのなら、やっぱり両方食べるのが正解だ。ボウル程度の大きさの入れ物で出てくるので、二人でシェアすればお腹いっぱいになることもない。

 量がそれほど多くないので、小腹が空いた時に食べたくなる料理。まあ、だから“小吃”というのだが、この小吃街には腹をペコペコに空かせて行くべきである。我々一行はお腹いっぱいになるまでいろいろな小吃を食べるべく、次の店へと向かった。
 

佐久間賢三
中国在住9年5か月を経たのち、尻尾を巻いて日本に逃げ帰る。稼いだ金は稼いだ場所で使い果たすという家訓を忠実に守ったため(?)、ほぼ無一文で帰国。食い扶持を稼ぐためにあくせく働き、飲みに行く暇も金もない日々を送っている。日本の料理が世界で一番美味いと思っているが、中華の味も懐かしく感じる今日この頃。