SecurityInsight | セキュリティインサイト

中国美味紀行その104(日本編26)「酒を飲みすぎた翌朝にピッタリ──茶樹菇排骨湯」

 中国全土に6万軒以上もの店があると言われている飲食店チェーンの「沙県小吃」(シャー シエン シァオ チー)が、昨年、日本にも上陸した。中国に住んでいた時にときどき食べていたその味を求めて、今回初めてその店に行ってみた。

飲みすぎた胃に優しく染み渡る

 中国に住んでいた頃、「あちこちに沙県小吃の店があるなあ」とは思っていたが、その頃はまさかそれが全国チェーンだとは思ってもみなかった。

 沙県というのは地名で、中国の南東沿岸部、福建省の内陸部にある三明市の一部である(中国では県は行政区分としては市の下になる)。沙県小吃はそこが発祥の飲食店チェーンで、その由来やビジネスモデルは話として面白いのだが、今回のテーマではないので省略するとして、とにかく中国のさまざまな場所に店がある。

 筆者がこの店に食べに行っていたのは、週末の、たいていは酒を飲みすぎた翌朝である。そこでいつも食べていたのが、この組み合わせである。

排骨湯(排骨スープ 10元=180円)と蒸餃(蒸し餃子 4元=72円)※値段は2014年の深圳でのもの(レートも当時のもの)

 排骨湯は、円筒形の形をした瀬戸物の食器の中に、豚だか牛だかの骨をぶった切ったものがいくつもゴロリとそのまま入っていて、それに他の具や調味料を入れて、その食器ごと蒸したり湯煎したりして作るスープである。

 骨から出たエキスが出汁となり、その割にはあっさりとした味わいのスープが、飲みすぎた胃に優しく染み渡るのである。

 今回は前の晩に飲みすぎてはいなかったが、やはり沙県小吃では排骨湯を頼まないと始まらないので、当然頼んだ。それがこれである。

茶樹菇排骨湯

茶樹菇は細長く、噛みごたえもある。おそらく干したものを使っており、これは中国も同様 4種類あったスープのうち、頼んだのは中国でもよく食べていた茶樹菇排骨湯。茶樹菇というのはキノコで、ネットで調べたところ、日本ではヤナギマツタケというそうである。

 骨には肉が少しだけくっついていて、出汁用なので特に美味いというものではないが、スープをすする合間にこの肉を歯で骨からこそぎ取るように食べるのも、また楽しみの一つである。

 肝心のスープのお味のほうは、おそらく現地とほぼ同じ味。ただ、さすがに前の晩に飲みすぎてはいなかったので、特に胃に染み渡るというほどではなかった。やはりこれは、酒を飲みすぎた翌朝に飲むのが一番だなと実感した。

 ちなみに今回は、スープ以外に他のものを食べたので蒸し餃子は食べなかったのだが、店のカウンターで店員さん2人が手で餃子の餡を皮に入れて包んでいる姿を見て、ああ、このあたりは中国そのままだなと感じた。中国の店でも、暇な時間帯に店員さんたち(小さい店がほとんどなので、たいていは経営者とその家族)が手分けして餃子を手で一個ずつ作っているのである。

 次回と次々回は、この店で食べた他の料理をご紹介する。
 

佐久間賢三
中国在住9年5か月を経たのち、尻尾を巻いて日本に逃げ帰る。稼いだ金は稼いだ場所で使い果たすという家訓を忠実に守ったため(?)、ほぼ無一文で帰国。食い扶持を稼ぐためにあくせく働き、飲みに行く暇も金もない日々を送っている。日本の料理が世界で一番美味いと思っているが、中華の味も懐かしく感じる今日この頃。