中国美味紀行その106(日本編28)「ピーナッツを使ったタレのかき混ぜ麺──拌麺」
- 2019/08/17 00:00
- 佐久間賢三
前回ご紹介した、沙県小吃のスープワンタン「扁肉」と一緒によく食べられているのが、汁なし麺の「拌麺」(バン ミエン)。麺とタレとネギのみじん切りというシンプルな構成で、特に美味いというものではないのだが、多くの中国人にとっては馴染み深い味なのである。
中国人にとっては故郷を思わせる味
「拌麺」は直訳すると「かき混ぜ麺」。なので、拌麺は特に沙県小吃だけの食べ物というわけではなく、汁なし麺なら普通はタレと麺をよく混ぜてから食べるので、中国各地にそれぞれの「〇〇拌麺」があったりする。ただし、単に「拌麺」というと、福建省のものを指すことが多いようである。
沙県小吃の拌麺のタレは、ビーナッツがベースとなっている。簡単に言ってしまうと、甘くないピーナッツバターを水っぽくして、少し塩気を足した感じ。今回食べた沙県小吃の拌麺がこれである。
ピーナッツは福建省の特産品の一つで、これを使った料理が多くある。タレにもよく使われており、蒸餃(蒸し餃子)を頼むと、小皿に入れられたビーナッツソース(もちろん甘くない)がほぼデフォルトで出てくる。
拌麺(かき混ぜ麺)という名前のとおり、出てきたら箸で混ぜてタレと麺をよくからめてからいただく。
初めて食べると、ピーナッツのタレの味が変に感じるのだが、食べ進めていくうちに慣れてきて、扁肉をおかずにして食べたり、扁肉のスープを飲んだりしながら食べると、なかなかいける。
沙県小吃は福建省発祥だが、中国各地に店があるので、おそらくほとんどの中国人が食べたことがあるのではないだろうか。今回行った店でも、カウンターで食べていた客のほとんどが中国人らしき人たちだった。
沙県小吃は、特に特徴のある食べ物ではないが、気軽に食べられる、故郷を思わせる味なのだろう。
佐久間賢三
中国在住9年5か月を経たのち、尻尾を巻いて日本に逃げ帰る。稼いだ金は稼いだ場所で使い果たすという家訓を忠実に守ったため(?)、ほぼ無一文で帰国。食い扶持を稼ぐためにあくせく働き、飲みに行く暇も金もない日々を送っている。日本の料理が世界で一番美味いと思っているが、中華の味も懐かしく感じる今日この頃。