SecurityInsight | セキュリティインサイト

中国美味紀行その111(日本編33)「口の中でホロホロ溶けるミルクプリン──双皮奶」

 これまで4回続けてスイーツが続いたので、続けて今回も中華スイーツをご紹介しよう。今回は広東スイーツの決定版ともいえる双皮奶である。

知る人ぞ知る順徳料理のスイーツ

 双皮奶(普通話:シュアン ピー ナイ、広東語:セォーン ペイ ナーイ)は、簡単にいえばミルクプリンのことで、広東省の省都・広州市の南西部にある仏山市順徳区が発祥とされている。

 順徳は日本ではあまり知られていないが、中国では美食の街として知られており、世界的に有名な広東料理は、順徳料理の影響を大きく受けていると言われている。

 そんな順徳料理の中には水牛の乳を使ったものがあり、その一つが双皮奶。そのため本来なら双皮奶には水牛の乳を使うのが本式であるが、順徳以外の地域では水牛の乳は手に入りにくいので、牛乳が使われることがほとんどである。

 双皮奶は、直訳すれば“2つの皮のミルク”。温めたミルクをお椀に入れ、表面に薄皮が張ってきたら、その皮に穴を開けて中のミルクを外に出し、残った薄皮はお椀の底に残しておく。

 外に出したミルクに卵の白身と砂糖を混ぜて撹拌し、薄皮が残ったお椀に再び戻すと、底の薄皮が上に浮いてくる。これを蒸してできたのが双皮奶である。最初にできた薄皮と蒸した時にできた薄皮の2層の皮があることから、双皮奶という名前が付いた。

 日本ではプリンというと冷やして食べるのが普通だが、中華スイーツの場合は温かいまま食べるものも多く、双皮奶も温かいままでも冷たくしても美味しく食べられる。

 この双皮奶が食べられる店が都内にできたので行ってみた。そこで頼んだのがこれである。

紅豆双皮奶。スタンダードは双皮奶だけだが、写真的に映えないので紅豆(あずき)をトッピングした。後ろにあるのは咖喱魚蛋

トッピングで加えたあずきの甘さもくどくなく、味に重厚感を与えてくれる 順徳出身だというおばちゃんが作った双皮奶は、いわゆるカスタードプリンのようなしっかりしたものではなく、柔らかめの茶碗蒸しのような舌触り。ほのかな甘さが心地良い。

 そして、現地の広東スイーツの店になぜかよくあるのが咖喱魚蛋(カーリー ユーダン)。フィッシュボール(魚のつみれ団子)にカレーソースをかけた小吃である。

魚蛋は魚丸(ユーワン)とも呼ばれ、火鍋の具や小吃としてよく食べられている こちらは、あっさりした味の魚蛋に、日本のカレーよりもさらさらしていて、それほど辛くないカレーソースがかけられている。小腹が空いたときなど、咖喱魚蛋とともに広東スイーツを食べるのが、広東人や香港人たちの楽しみでもある。

 今回でしばらくの間、日本編はお休み。次回から新しいシリーズに入る。

 

 


 

佐久間賢三
中国在住9年5か月を経たのち、尻尾を巻いて日本に逃げ帰る。稼いだ金は稼いだ場所で使い果たすという家訓を忠実に守ったため(?)、ほぼ無一文で帰国。食い扶持を稼ぐためにあくせく働き、飲みに行く暇も金もない日々を送っている。日本の料理が世界で一番美味いと思っているが、中華の味も懐かしく感じる今日この頃。