吃貨美味探訪記 No.131(日本編その34)「臭いからこそ食べる価値がある!?──臭豆腐」
- 2020/09/05 00:00
- 佐久間賢三
前回からマレーシア編が始まったが、毎月第1週のコラムでは、以前と同様、東京を中心とした日本で食べられる中国料理を取り上げる「日本編」をお届けしていく。前回の日本編が昨年12月末だったので、実に9か月ぶりの再開となる。というわけで再開1回目は、あの臭い食べ物「臭豆腐」(チョウ ドウ フ)である。
アメ横の臭豆腐の臭いやいかに!
久しぶりに地下鉄で上野の近くを通ったので、途中下車してアメ横に行ってみた。目的は当然、屋台街。日本編の再開が近づいてきたので、何か新しいネタがないかと来てみたのである。
とはいえ、店は変わらない。出すものもそんなに変わるわけではない。ところが、いくつかの店のメニューをじっくり見ていったら、以前は気づかなかったものが見つかった。それが臭豆腐だった。
中国や台湾に行ったことがある人なら、あの“臭い”を街中で嗅いだことがあるのではないだろうか。どこからともなく漂ってくるウ○コのような臭い。深圳にいた頃、バスを降りた途端にあの臭いに襲われ、見たら、おばさんがバス停の近くに小さな台を置き、そこで臭豆腐を油で揚げて売っていた。上海のような大都市でも、ちょっと庶民的な商店街だと、臭ってくることがある。そして台湾の夜市でも、この臭いが漂っている。
臭豆腐の発祥は、中国南部の広東省の北隣にある湖南省。唐辛子を大量に使った辛い料理で有名なところである。臭豆腐は、発酵させた漬け汁にスライスした豆腐を漬け込むと、あの強烈な臭いになるそうである。それを油で揚げて、タレなどをつけていただく。それが中国各地、そして台湾まで広がっていったのだという。
湖南省には14年前に一度だけ行ったことがあり、省都・長沙市にある有名な湖南料理店の「火宮殿」(フオ ゴン ディエン)で臭豆腐を食べたことがある。どんな見た目でどんな味だったかはよく覚えていないのだが、さすがに高級店だからなのか分からないが、それほど臭くなかったのと、思っていたより美味しかったのは覚えている。
ちなみに湖南省の臭豆腐は、豆腐の周りがまるで炭のように真っ黒である。
で、アメ横の臭豆腐である。こちらはさすがに臭いがほとんどしない。日本の商店街であの臭いを漂わせたりしたら、近所から猛抗議がくることだろう。
お味のほうは、揚げたてでやや香ばしく、甜麺醤(ティエン ミェン ジァン)のような色の味噌とも相性よし。食べてみても、あの臭いはほとんどしない。ただ、美味しいのだけど、やっぱり臭くないと物足りない。臭くなければ臭豆腐ではない。単なる揚げ豆腐である。かといって、あの臭い臭豆腐を積極的に食べたいとも思っていないのだけど。
佐久間賢三
9年5か月に及ぶ中国滞在から帰国してきて早5年半以上。日本での生活をなんとか続けながらも、外国のあの刺激的な日々が恋しくなってきている今日この頃。世界的なコロナ禍の影響でしばらくは海外旅行に行けそうもなく、雑誌の海外旅行特集や昔の写真を見てウサを晴らそうとするも、かえってウップンが溜まるという悪循環の中で身悶えている。