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吃貨美味探訪記 No.132(大馬編その2)「マレーシアの朝食の定番──ナシルマッ」

 新たに始まったマレーシア編の第2回は、マレーシアにおける朝食の定番中の定番ともいえるナシルマッ(Nasi lemak)である。こちらは中華系ではなくマレー系の料理であるが、マレー系の人にも中華系の人にもインド系の人にもよく食べられている。

直訳すると「脂ご飯」

 書き出しで「マレー系の人にも中華系の人にもインド系の人にも」と書いたが、マレーシアのことをよく知らない人のために説明しておくと、マレーシアは多民族国家で、そのうちの3つの主要民族がマレー系と中華系、そしてインド系なわけである(それ以外に、先住民の少数民族がいる)。マレー系が人口が一番多く、全体の人口の3分の2、中華系が4分の1、インド系が1割弱といったところである。

 マレーシアでは、朝食は家ではなく食堂に行って食べるのが一般的で、家のすぐ近くに食堂があれば歩いて行くのだろうが、たいていは家族で車に乗って食べに行く。出かける前に近くの親戚や知り合いと連絡を取り合い、食堂で待ち合わせて一緒に食べることもよくある。

 食堂といっても、たいていの場合は食堂の中にいろいろな料理の屋台が入っていて、空いているテーブルについたら、自分が食べたい料理のある屋台に行ってオーダーすると、テーブルまで持ってきてくれるシステムになっている。

 このへんはおいおい説明していくとして、食堂によっては、各テーブルの上に紙や葉っぱで包まれた、円錐または三角錐の形をしたものが置いてあることがある。これがナシルマッである。

思わず一つ、手に取りたくなる形のナシルマッ

 米をココナッツミルクで炊いて、そこに揚げた小魚とピーナッツ、生のきゅうり、ゆで卵、そしてサンバルという唐辛子ベースの味噌を添えて、バナナの葉っぱで包んである。それを広げるとこんなふうになる。

包みを開いたところ。上の写真とは別の店のもの

こちらはオーダー式のナシルマッ。インド系の食堂だったので、ちょっぴりカレー付き

 ナシルマッはマレー語で「Nasi lemak」と書き、最後のkは発音する一歩手前で止めるので、これでナシルマッと読む(のが一番近い)。ナシは「ご飯」という意味で、インドネシアやマレーシアのチャーハンである「ナシゴレン」のナシと同じである(ゴレンは揚げるという意味)。ちなみに、マレー語とインドネシア語は基本的に同じ言語で、マレー語は本来はマレーシア語と呼ぶらしいが、細かいことはここでは置いておく。

 一方、ルマッのほうは「脂」という意味で、合わせて直訳するとナシルマッは「脂ご飯」。朝から食べたら胸焼けしそうな名前であるが、そんなにしつこいわけではない。ココナッツミルクに油脂が含まれているため、この名前なのかもしれない。ちなみに中国語では「椰漿飯」と書く。

 サンバルの赤が辛そうに見えるが、それほど辛くない。ここに、揚げた小魚とピーナッツの香ばしい塩気や食感が混じり、ときおり食べる生のきゅうりが口直し的な役割を果たしてくれる。

 1個がそれほど大きくないので、2個くらい平気で食べられそうだが、せっかくいろいろな食べ物がある食堂に来て、ナシルマッだけでお腹いっぱいにしてはもったいない。オーダーしたご飯が出てくるまでのつなぎとして食べるくらいがちょうどよさそうである。
おまけカット。首都クアラ・ルンプールのランドマーク、ペトロナス・ツインタワー

なんちゃってマレー語講座。お店のオープン(開店中)は「buka(ブカ)」。「部下が開く」と覚える

佐久間賢三
9年5か月に及ぶ中国滞在から帰国してきて早5年半以上。日本での生活をなんとか続けながらも、外国のあの刺激的な日々が恋しくなってきている今日この頃。世界的なコロナ禍の影響でしばらくは海外旅行に行けそうもなく、雑誌の海外旅行特集や昔の写真を見てウサを晴らそうとするも、かえってウップンが溜まるという悪循環の中で身悶えている。