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吃貨美味探訪記 No.142(大馬編その7)「緑色のニョロニョロの正体は!? 暑いマレーシアにぴったりの屋台スイーツ──チェンドル」

 今回はマレーシアの代表的なスイーツをご紹介する。これまでマレーシアで食べてきたスイーツのなかで最も多く食べてきたチェンドル(Cendol)である。ウィキペディアで見たところ、チェンドルは一説によるとインドネシアが発祥で、マレーシアを含めた東南アジアのさまざまな国で食べられているようである。

屋台で食べるのが一般的なスイーツ

 マレーシアの首都クアラ・ルンプールから車で北に2時間ほどのところにあるイポーは、盆地の中心にあるからなのか、毎日とにかく暑い。マレーシアは常夏の国だけに全土が一年中暑いのだが、イポーはもっと赤道寄りのクアラ・ルンプールよりも暑いらしい。

 イポーを訪れるたびに現地の知り合いに車で連れていかれるのが、チェンドルの屋台。日中の暑い最中、どこかに行った途中に立ち寄る感じで、小さな商店街だったり、田舎道の路肩だったりに停めてある、軽トラを改造した屋台に食べに行くのである。

(左)商店街にある屋台 (右)周りに何もない通りの路肩にある屋台。なので駐車スペースはたっぷり

 チェンドルといっても、聞いたことがない人がほとんどであろう。これである。

一つ50円前後らしいが、いつも知り合いが払ってくれるので、実際にいくらなのか分からない

 かき氷の中にたっぷりのココナッツミルク(だと思う)を入れ、トッピングはアズキと緑色のニョロニョロ、それに黒蜜がかけられている。

 ただでさえ暑いなか、屋外で食べるのだから、かき氷はあっという間に溶けていく。なので、かき氷というよりも、溶けかけたシャーベットを食べている感じである。これが、暑さでほてった体をほどよく冷やしてくれる。甘さもほんのりしていてくどくない。日本のかき氷ほど量が多くないからか、食べていて頭がキーンとくることもない。

 思い返してみれば、チェンドルを食堂などの屋内で食べたことがない。すべて屋台である。おそらく、暑い昼間に車で出掛けている最中、涼を求めてサクッと食べるようなものなのだろう。

 この原稿を書くために昔の写真を見ていくと、チェンドルの写真がいくつも出てきた。おそらくマレーシアでもっとも多く食べた三大食べ物の一つに入ると思う(そのうちの一つは前回、前々回で取り上げたカレーヌードルである)。

 というわけで、これまでに食べたチェンドルの写真をお見せしよう。同じチェンドルでも、店によってやや異なるのが分かる。

(左上)缶詰のコーン入り (右上)もち米入り (左下)ニョロニョロたっぷり (右下)意外にこの溶けかけが美味しい

 さて、気になるのが、中に入っている緑色のニョロニョロである。これは米粉と緑色の着色料で作った麺状のゼリーで、特に味はない。ウキペディアによると緑色の着色料にはタコノキという植物の葉を用いているそうだが、そもそもタコノキがどんなものなのかさっぱり見当がつかない。いずれにしても、自然の素材で着色しているようである。

 このニョロニョロ、特に名称があるわけでもないようで、ウィキペディアのマレーシア語版で見てみても「jeli hijau」(緑色のゼリー)と、そのまんまの表記をしている。

 食べ終えたらまた車に乗り込んで、家に帰るか別の場所に出発していく。その時には体内の熱がすっかり冷めている(気がする)。チェンドルは、暑いイポーになくてはならないスイーツなのである。おそらく日本で売っても、それほどウケないのではないかと思う。
おまけカット イポーの旧市街にある「二奶巷」(アール ナイ シァン)。日本語にすると「愛人小路」といったところで、20世紀初め頃、金持ちの男性たちが愛人をこの路地の家に住まわせていたことから、この名がついたそうである。今は観光客が集まる通りになっている

佐久間賢三
9年5か月に及ぶ中国滞在から帰国してきて早5年半以上。日本での生活をなんとか続けながらも、外国のあの刺激的な日々が恋しくなってきている今日この頃。世界的なコロナ禍の影響でしばらくは海外旅行に行けそうもなく、雑誌の海外旅行特集や昔の写真を見てウサを晴らそうとするも、かえってウップンが溜まるという悪循環の中で身悶えている。