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吃貨美味探訪記 No.144(大馬編その8)「マレーシア産が一番美味しい果物の王様──ドリアン」

 今回は、連載144回目にして初めて、料理ではないものをご紹介する。それは、マレーシアの食べ物を語るうえで絶対に外せない果物の王様、ドリアンである。これまで、マレーシア以外ではタイ、ベトナム、中国(おそらくタイ産の輸入物)でドリアンを食べたが、マレーシアのドリアンが一番美味しかった。その理由はなんなのだろうか。

熟して自然に木から落ちたものしか収穫しない

 ドリアンを中国語では榴槤(リウ リェン 広東語ではラウ リン)と言う。見たことも食べたことがない人でも、ものすごく臭いという話は聞いたことがあるのではないだろうか。

 筆者が最初にドリアンを食べたのはタイのバンコクに行った時。臭いがすごく、味も好みが分かれると聞いていたものの、臭いはそれほどでもなく、味も特に気にならず、可もなく不可もなしといった感じだった。

 それから数年後、初めてマレーシアのイポーに行った時に食べたドリアンが、なんだこれは!? ドリアンってこんなに美味いのか! と衝撃を受けるくらい美味かった。以来、マレーシアに行く度に楽しみにしているのだが、果物なので旬があり、それを外すとほとんど出回っていないため、食べられないこともままあった。

 マレーシアのドリアンの旬は6月〜8月と12月〜1月。その時期にイポーを訪れると、各地にドリアンを販売する屋台がたち、下の写真のように道端にシートを敷いてドリアンを売る人も出てくる。匂いが強いので店内には置いておけないからだろう。

ドリアンは基本的に量り売りで、値段は1kgいくらと表示されている

見た目どおり、殻はかなり硬い イポーでこれまで何度もドリアンを食べてきたが、いつも現地の知り合いが買ってくれるということもあり、美味しいドリアンの選び方もよく分かっておらず、実は値段すらよく分かっていない。山間の道路沿いにあった屋台では1kgあたり8リンギット(210円)だったが、高級品種ともなると、この5倍以上の値段らしい。

 そして、どれにするか選ぶと、店の人がナタで硬い殻を割ってくれて、身を取り出してプラスチックパックに入れてもらったり、割った殻ごとビニール袋に入れたりして持って帰ることになる。それがこれである。

一つの房に入っている果肉は3つほどに分かれている

 殻の中は房のようになっていて、そこに果肉が詰まっている。臭いというが、好きになってしまえば匂いはまったく気にならない。果肉を指でつまみ上げるとネチョッとした感触で、中にはけっこう大きな種が入っているので果肉の量は見た目ほどではない。

 種の周りの果肉をなめるようにして食べると、もう、得も言われぬ味わいが口いっぱいに広がる。ドリアン好きにはたまらない瞬間である。

ドリアンの木。けっこう大きい

木の上方でたわわに実るドリアン。こんなのが頭の上に落ちてきたら、重傷間違いなしである

 日本にも輸出されているタイのドリアンは、バナナと同様、熟す前に収穫して輸送中に熟成させていくそうだが、マレーシアのドリアンは熟して自然に木から落ちたものしか収穫しないとか。これがマレーシアのドリアンの美味さの理由なのだろう。

 マレーシアのドリアンは最近、人気が上がり、多くが輸出(おそらく主に中国)に回されて、国内では値段が上がって品薄だとか。特に有名なのは「猫山王」(またはMusang King)という品種である。

 次回マレーシアに行ったら、ぜひこの猫山王を食べてみたいものである。
おまけカット。イポーには、このように崖の下にある仏教寺院が多くある。洞窟の中に仏像が祀られている

佐久間賢三
9年5か月に及ぶ中国滞在から帰国してきて早5年半以上。日本での生活をなんとか続けながらも、外国のあの刺激的な日々が恋しくなってきている今日この頃。世界的なコロナ禍の影響でしばらくは海外旅行に行けそうもなく、雑誌の海外旅行特集や昔の写真を見てウサを晴らそうとするも、かえってウップンが溜まるという悪循環の中で身悶えている。