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吃貨美味探訪記 No.146(大馬編その9)「直訳すると“土鍋ねずみビーフン”となる麺料理の正体は!?──瓦煲老鼠粉」

 マレーシア・イポーでの朝。いつものようにみんなで車に乗って食堂に行き、朝食を食べた。いつものように食べるものはお任せ。出てきたのは土鍋に入った麺料理だったが、名前を聞いて驚いた。それは「瓦煲老鼠粉」(ワー バオ ラオ シュー フェン)で、老鼠は中国語でネズミのこと。直訳すると「土鍋ねずみビーフン」である。つまりこれには、ネズミの肉が入っているのか!?

太くて短く、両端が尖っている麺

 というわけで、今回は前振りなしで、料理の写真を出すことにする。テーブルに運ばれてきた「瓦煲老鼠粉」はこれである。

下手に触ったらやけどするほど熱々で出てくる

 見た目は特に変わったところはない。土鍋を火に直接かけて作るようで、というか、そうでなければ土鍋で作る意味がないのだが、スープがグツグツいっている。スープはとろみがあって色が濃く、具が少ないが、マレーシア版の鍋焼きうどんといったところである。

 中華系の麺料理は、日本とは違って、具は麺の下のほうに入っていることが多い。食べ始める前に麺とスープをよく混ぜ合わせて初めて、その姿を現す。ということは、このグツグツいっているスープの中に、ネズミの肉が入っているのだろうか?

 しかし、いくら混ぜても、肉らしきものは見当たらない。それも当然のことで、これはネズミの肉が入ったビーフンではなく、「老鼠粉」という名前のビーフンを使って作られているのである。

麺はこのように短く縮れている 老鼠粉の麺の太さは日本のうどんほどだが、長さは10cmもない。その大きな特徴は、麺の両端が尖っていること。これがネズミの尻尾に似ていることから、「老鼠粉」と呼ばれているらしい。また、ネットで調べると別の説もあり、両端が尖っている形がネズミに似ているからというのもあった。見た目からすると、ネズミの尻尾のほうが近いと思うのだが。

食堂内で瓦煲老鼠粉を売る屋台。一杯5リンギット。今のレートで135円ほどだが、8年前の写真なので、今はもう少し高いかも このビーフン(米粉)は中華圏および東南アジアの国々で広く食べられていて、発祥は中国・広東省の東部にある梅州(メイ ヂョウ)。ここは客家人が多い地域で、客家人の間では「老鼠粄」、マレーシアでは「老鼠粉」、香港では「銀針粉」、台湾では「米篩目」と、それぞれ別の呼び方をされているようである。銀針粉はその色と形からそう呼ばれ、米篩目のほうは、篩(ふるい)のような形をしたものの穴から押し出すようにして作るからそう呼ばれているのだという。

 上に書いたことは、今回の原稿を書く際にネットで調べた後付けの知識だが、これを食べた時にはネズミの肉が入っていないことを教えてもらっていたので、安心して美味しくいただくことができた。あまり味のないビーフンに濃いめの味のスープがからみ、朝から大満足の一品であった。
もやしもイポーの名物で、太くて短いその形状は、老鼠粉にそっくり

イポーから車で1時間ほどのところにあるキャメロン・ハイランドの茶畑。ハイランドの名のとおり高地にあるので涼しく、避暑地や観光地となっている

佐久間賢三
9年5か月に及ぶ中国滞在から帰国してきて早5年半以上。日本での生活をなんとか続けながらも、外国のあの刺激的な日々が恋しくなってきている今日この頃。世界的なコロナ禍の影響でしばらくは海外旅行に行けそうもなく、雑誌の海外旅行特集や昔の写真を見てウサを晴らそうとするも、かえってウップンが溜まるという悪循環の中で身悶えている。