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吃貨美味探訪記 No.151(日本編その44)「今が旬だけど食べすぎにご注意──荔枝(ライチ)」

 次の美味探訪記のネタを求めて、久しぶりに池袋駅北口に。いろいろな料理の店が並ぶフードコートに初めて行ってみたところ、中国食品を売る店が併設されていた。レジに並んでいる人が持っているものを見ると、手には小さくて丸い、赤い果物が。というわけで、今回は今が旬のライチを取り上げることにする。このコラムで料理ではなく果物を取り上げるのは、マレーシア編でのドリアン以来、2度目である。

ライチの写真をFacebookにアップしたら

 ライチは中国南部が原産の果物で、あの楊貴妃の好物だったことでも知られている。なんでも、中国南部から唐の首都・長安まで早馬で運ばせていたとか。

 ライチは中国語では「荔枝」と書く。これは普通話(中国標準語)読みだと「リー ヂー」だが、広東語読みだと「ライ ジー」となり、中国南部原産の果物だけに、広東語読みがそのまま海外に伝わったようだ。英語だとlycheeと書き、Wikipediaによると、アメリカ英語ではこれを「リー チー」、イギリス英語だと「ライ チー」と読むらしい。

 日本でも最近では缶詰や冷凍ものが売られるようにはなっているが、生で食べたことがある人は少ないのではないだろうか。ちなみに筆者が初めてライチ(の缶詰)を食べたのは、今から35年も前のこと。しかも、場所はフランスの中華料理レストランだった。今までに食べたことがないような酸味と甘味。その以後しばらくはライチを食べる機会はなかったが、忘れられない味だった。

 そして、その約20年後に中国南部の深圳で暮らすようになり、初めて生のライチを食べることとなった。

 深圳の周囲だと北隣の東莞(ドン グァン)が有名な産地で、6月から7月にかけての旬の間は、深圳ではあちこちの歩道に簡易屋台が設けられ、枝についたままのライチが無造作に地面にどっさりと置かれて売られていた。

 という前置きはさておき、池袋で買ってきたライチがこれである。

 ビニール袋に13粒入って480円。高いんだか安いんだかよく分からないが、普通のスーパーでは売っていないので、ここで買うしかない。撮影用に皿に載せて写真を撮ると、さっそく食べてみた。

 皮は指で簡単に剥ける。赤い皮から顔をのぞかせたのは、ツルツルの白っぽい身。収穫されていからどれくらいたっているのか分からないが、まだ瑞々しく、剥いた皮の隙間から透明な汁が垂れてくる。味はやや薄めだったが、それでも他の果物にはない甘さがなんともいえなかった。

 一粒はピンポン玉を一回り小さくしたくらいなので、13個を一気に食べようと思えば簡単に食べられるが、この日は4個しか食べなかった。というのには理由があった。ライチは食べ過ぎると体によくないのである。

 中国漢方の概念の一つに「上火」というものがある。これは、体内に熱がこもってしまう状態のことをいうのだが、ライチがまさに上火の食べ物で、たくさん食べると体が上火になってしまうのだ。

 以前、深圳でライチを20個まとめて食べたところ、数日たって、なんと、目にものもらいができた。ものもらいなど、小学生の時以来である。ネットで調べてみると、やはりライチの食べ過ぎはものもらいと関連性があるようだった。ライチを食べるのは、1回あたり多くて5個までにしておいたようがいいと書かれていた。

 そんなわけで、4個に抑えておいたのである。残ったライチは、翌朝に家族で3個ずつ分けて食べた。

 このライチでは、後日談がある。上のライチの写真をFacebookにアップしたところ、新型コロナウイルスに関係する話を書くと自動的に下に表示される「ワクチンに関するリソースについては、新型コロナウイルス感染症情報センターをご覧ください」というバナーが貼られていたのだ。

 Facebookの自動認識機能がライチの写真を新型コロナウイルスと勘違いしたのか?と思ったのだが、よく見返したら、文章でワクチンのことに一言だけ触れていた。それでバナーが貼られたようである。でも、このライチの写真、確かにちょっと新型コロナウイルスに似てはいる。

佐久間賢三
9年5か月に及ぶ中国滞在から帰国してきて早5年半以上。日本での生活をなんとか続けながらも、外国のあの刺激的な日々が恋しくなってきている今日この頃。世界的なコロナ禍の影響でしばらくは海外旅行に行けそうもなく、雑誌の海外旅行特集や昔の写真を見てウサを晴らそうとするも、かえってウップンが溜まるという悪循環の中で身悶えている。