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吃貨美味探訪記 No.154(大馬編その13)「朝はこれを飲まなきゃ始まらない?──Kopi(コピ)」

 マレーシアのイポーの人たちにとって、朝食に欠かせない飲み物、それがKopi(コピ)である。コピというのはマレー語でコーヒーのことなのだが、日本人のコーヒーとはまったく異なる飲み物。そして、なぜイポーの人たちはこのコピが好きなのか。それには理由があった。

イポー生まれのホワイトコーヒー

 もう何度か説明しているが、念の為にまた書いておくと、マレーシアでは朝食を外の食堂に食べに行くことが多い。食堂といっても、小さな屋台村かフードコートのような感じで、食堂の中央にテーブルが並び、その周りにいろいろな料理の屋台がある。空いているテーブルについてから、食べたい料理の屋台のところに行って頼むのである。

イポーの有名店「南香茶餐室」の朝食(丼はカレーヌードル)。朝から幸せ

 それぞれの屋台は経営者が異なるので、料理が運ばれてきたらお金を払うシステムなのだが、飲み物と簡単な軽食は、この食堂全体の経営者の受け持ちで、テーブルに注文を取りに来る。なので食堂に来た以上、飲み物を頼むのはマストのようだが、これは単に習慣というか、礼儀みたいなもので、もしかしたら頼まなくてもいいのかもしれない(このあたり未確認)。

 飲み物といってもだいたいどこの食堂も同じで、コピに紅茶、ミロ、中国茶、豆乳、ソフトドリンクなどである。

 そこで多くの人が頼むのがコピ。コピに使われるコーヒー豆は、少量のマーガリンが加えて焙煎されていて、挽いた豆を大量のお湯に浸し、布フィルターで漉して作る。そのため非常に濃厚な味わいで、しかもデフォルトでコンデンスミルクが入れられている。

この表面のアワアワがたまらない。ホットのコピには必ずレンゲがついてきて、これでかき混ぜたり、コーヒーが熱いうちはこれで啜ったりする。アイスコピはKopi Aisという

 このコピは怡保白咖啡(イポー・ホワイト・コーヒー)とも呼ばれ、イポー(怡保)に住む華人が作り出したものである。地元の食堂「南香茶餐室」の一族がこれをもとにしたインスタントコーヒーを売り出し、その後、喫茶レストランチェーン「オールドタウン・ホワイト・コーヒー」を展開し、各地に広まった。そんなこともあってか、イポーの人たちにとってコピは日々の生活になくてはならない飲み物となっているわけである。

(左上から時計回りに)南香茶餐室の外観。同店の店内。ビニール袋に入れられたテイクアウトのKopi-Oを描いた壁画。「オールドタウン・ホワイト・コーヒー」の本店(筆者はまだ入ったことがない)

 このコピ、デフォルトでコンデンスミルクが入れられていると書いたが、ブラックで飲むこともでき(それでも砂糖入りだが)、Kopi-O(コピ・オ)と呼ばれている。このOはアルファベットのOだが、実は閩南語(みんなんご)の「烏」(烏龍茶の烏)からきている。閩南語は中国南東部の福建省南部や台湾の一部で話されている言葉で、「烏」には「黒」の意味があり、読み方が「オ」であることから、ブラックのコピはKopi-Oと呼ばれるようになったようだ。

 話がやや横にズレたが、コピはホットで飲んでもよし、アイスで飲んでもよし。特に熱帯の暑い昼間には、冷たくて甘いコピが、喉にたまらなく心地よい。

 ちなみに「オールドタウン・ホワイト・コーヒー」は海外にもチェーン店展開しているが、日本にはまだ上陸していない。日本にも出店してほしいような、マレーシアに行く時の楽しみにとっておきたいような、複雑な気持ちである。
おまけカット。イポーはカルスト地形となっていて、中国の桂林に似た景色が広がる

佐久間賢三
9年5か月に及ぶ中国滞在から帰国してきて早5年半以上。日本での生活をなんとか続けながらも、外国のあの刺激的な日々が恋しくなってきている今日この頃。世界的なコロナ禍の影響でしばらくは海外旅行に行けそうもなく、雑誌の海外旅行特集や昔の写真を見てウサを晴らそうとするも、かえってウップンが溜まるという悪循環の中で身悶えている。