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吃貨美味探訪記 No.159(日本編その48)「ほんのりした甘さの四川の伝統的甘味──冰粉」

 前回の魯肉飯(ルー ロウ ファン)に続き、今回はそれとセットで頼んだ「麺線」(ミエン シエン)について取り上げる予定だったが、先日、たまたま通りかかった店で懐かしい食べ物を見つけたので、予定を変更してそちらをご紹介することにした。

「これが一番四川っぽい」トッピングを追加

 ある日、ちょっと用事があって散歩がてら高田馬場に行くと、通りがかりの小さな店に「冰粉」(ビン フェン)の文字が。冰粉は四川省の伝統的甘味で、以前に食べたことがあり、懐かしくなって店に入ってみた。

 高田馬場といえば、最近は“ネオ中華街”として中国各地の料理を出す店が増えてきている。ここもその一つと思われるが、冰粉は中国でもそれほどメジャーな食べ物ではないので、その専門店とは珍しい(実際はそれ以外に飲み物も販売していたが、その2種類だけ)。

 冰粉の冰は、ご存じのとおり日本語の漢字では「氷」にあたり、冰粉はゼリー状の冷たいスイーツである。四川省周辺でよく食べられているそうで、オオセンナリというペルー原産の植物の種を水の中で揉むと、ゼリー状になるのだという。そういえば台湾で食べた愛玉子(オー ギョー チ)も、同じような作り方だった。

 冰粉は、2年前に四川省に旅行に行った際に、現地の友人と一緒に楽山(ラー シャン)に遊びに行き、その時に初めて食べた。わずか2年ほど前のことなので、懐かしいというのはややオーバーなのだが、それはさておき、その時に食べた冰粉がこれである。

楽山の昼間に町中で食べた冰粉(7元)。氷や冷蔵庫で冷やしてあるわけではなく、やや冷たいていど

 冰粉そのものには特に味はなく、そこにかけるタレが甘みを決める。左の具は白玉で、赤いのはクコの実、中央がナッツを砕いたもの、そして奥に見えるのが、醪糟(ラオ ザオ)または酒醸(ジゥ ニァン)と呼ばれる、もち米を発酵させた甘味料で、米麹で作った日本の甘酒に似た独特の甘みがある。

 そして、高田馬場の店にあった冰粉はトッピングを選ぶことができ、フルーツなどを乗せることもできたが、店の人(四川人)が「これが一番四川っぽい」とオススメしたのが「糍粑」(ツー バー)という中国のモチ(写真右上の、きなこのようなものがかかったもの)。それ以外にもいろいろ乗っかって、味付けは黒糖。甘みが足りなければ、黒糖を足してくれるという。

真ん中に見えるのはドラゴンフルーツ。下の方に冰粉が入っている

冰粉そのものは形のないゼリーのような感じ お味のほうは、ほんのりした甘さで悪くない。量もそこそこある。食べているうちに黒糖が足りなくなって甘さが薄れてきたので、黒糖を足してもらった。

 ただ、味は悪くない、悪くないのだけど、冰粉そのものが味に特徴なさすぎ。タピオカほどのインパクトもない(まあ一時期大流行したタピオカも、今ではだいぶ下火になったが)。日本ではどうかなあ……というのが正直な感想だった。
おまけカット1 四川省の省都・成都市中心部(といってもど真ん中ではない)の町並み

おまけカット2 上の写真の通りを奥に入ると、こんな庶民的な商店街が

佐久間賢三
9年5か月に及ぶ中国滞在から帰国してきて早5年半以上。日本での生活をなんとか続けながらも、外国のあの刺激的な日々が恋しくなってきている今日この頃。世界的なコロナ禍の影響でしばらくは海外旅行に行けそうもなく、雑誌の海外旅行特集や昔の写真を見てウサを晴らそうとするも、かえってウップンが溜まるという悪循環の中で身悶えている。